失語症のある人のための意思疎通支援

書誌事項

タイトル別名
  • Supported communication for adults with aphasia
  • シツゴショウ ノ アル ヒト ノ タメ ノ イシ ソツウ シエン

この論文をさがす

抄録

<p>失語症は言語障害の 1 つで,脳血管障害などによって大脳が障害され,聞く,話す,読む,書くという言語様式が障害された状態をいう.症状はさまざまあり,重症度やタイプによって現れる症状は異なる.失語症になると,それまで他者とのコミュニケーションに支障のなかった人が,突然,それができなくなるという状況に陥る.</p><p>これまでに行われたさまざまな調査から,失語症のある人は言語機能に障害を負うだけでなくさまざまな問題に直面することが明らかにされている.失語症の人の復職率は8%と極めて低く,発症前に生計を支えていた年代の場合,復職の問題,生活の問題が生じることになる.また失語症は外から障害の存在がわかりにくいという特徴を持ち,家族以外とのコミュニケーションが難しい場合も多く,それを避けようとして引きこもりなどが生じる場合もある.</p><p>このように失語症のある人が置かれている状況は厳しいものがあるにもかかわらず,これまで失語症に焦点を当てた施策はほとんど行われてこなかった.平成18年に施行された障害者自立支援法は平成25年からは障害者総合支援法となり,障害者への支援・サービスはこれに基づき実施されている.法律施行後 3 年を目途とした見直しの項目として「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚,言語機能,音声機能その他の障害のための意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方」がとりあげられた.厚労省は意思疎通支援者養成に関する実態調査を行った.これを受けて,各地で統一して用いることのできる意思疎通支援者養成のカリキュラムを作成した.これに基づき,平成28年度にはテキストを作成し,平成29年度には支援者養成を行う指導者のための研修を開始することになった.平成30年度からの地域生活支援事業の実施主体は都道府県であり,都道府県によって温度差があること,支援者養成を担うことになる都道府県言語聴覚士会と自治体との緊密な連携の構築が必要であること,必要な支援を明確にするためにも当事者である失語症のある人を,地域でのコミュニケーションの場にどのように参加可能とするか,など課題はあるが,意思疎通支援の側面で失語症に焦点があてられたこの機会を逃すことなく意思疎通支援者養成ならびに派遣事業を進めることが重要である.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ