マルコフ連鎖を用いた兵庫県東播磨地方のため池植生の将来予測

  • 石井 禎基
    神戸大学大学院自然科学研究科生命科学専攻:神戸大学理学部生物学教室 土屋研究室
  • 宮部 満
    神戸大学大学院自然科学研究科生命科学専攻
  • 角野 康郎
    神戸大学理学部生物学科

書誌事項

タイトル別名
  • Markov chain analysis to predict future changes in macrophytic vegetation in irrigation ponds in East-Harima, Hyogo Prefecture, western Japan
  • マルコフ レンサ オ モチイタ ヒョウゴケン ヒガシハリマ チホウ ノ タメイケショクセイ ノ ショウライ ヨソク

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説明

兵庫県東播磨地方において過去20年間(1979-1999年)にため池に生育する水生植物の大半の種で年々その出現頻度が減少し,個々のため池における優占度も低下している実態が明らかにされた(石井・角野2003).本研究では,行列モデルのマルコフ連鎖を用いてため池の植生の将来予測を行った.まず,のべ831カ所のため池の植生データを用いてクラスター分析を行い,東播磨地方におけるため池植生を特定の1-2種の優占種で特徴づけられる17タイプに類型化(Type1-17)した.次に,これらのため池の植生タイプが今後どのように変化するのかを予測するために,1979-1983年の調査と1998-1999年の調査に共通する165カ所のため池から植生タイプの推移確率行列を作成し,それを基にしてそれぞれの植生タイプの出現率(%)をマルコフ連鎖により算出した.その結果,過去20年間の変化が将来も続いたと仮定をしたとき,東播磨地方のため池植生は,100年後にはほとんどの植生タイプが消滅あるいはその出現率が激減し,無植生またはヒシ属(Trapa)が優占あるいは多産する富栄養化したため池(合計出現率約74%)とジュンサイ(Brasenia schreberi J. F. Gmel.)を優占種とする貧栄養なため池(出現率約16%)への2極分化が予想された.また,過去20年間のうち前半の10年と後半の10年とでは,後半にため池の植生の衰退がより顕著であったことも示された.これらの結果は,東播磨地方のため池の植生が危機的な状況にさらされていることを示しており,早急なため池の環境保全が望まれる.

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 10 (2), 151-161, 2005

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (26)*注記

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