深泥池湿原へのニホンジカの侵入と植生に対する採食圧

書誌事項

タイトル別名
  • Invasion of the Mizorogaike Wetland by sika deer, and their effects on vegetation
  • 深泥池湿原へのニホンジカ侵入と植生に対する採食圧
  • ミゾロガイケ シツゲン エノ ニホンジカ シンニュウ ト ショクセイ ニ タイスル サイショクアツ

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抄録

深泥池(京都市北区)には、貧栄養な水質の池に高層湿原的なミズゴケ泥炭地が浮島として成立しており、貴重な水生植物群落が発達している。シカによる浮島利用を明らかにするために2005年に浮島に自動撮影装置を設置した。撮影された全182枚の写真のうち、シカが33枚、タヌキが28枚、キジが10枚撮影された。撮影された時間帯からシカは日中の活動を避けて主に夜間に浮島に侵入していることが確認された。さらに、浮島全域に総延長1,600m、幅1mのベルトトランセクトを設けてシカの採食痕の空間分布と採食品目を調査した。その結果、14種の草本植物から採食痕が発見され、特にカキツバタとミツガシワは5割以上のサブトランセクト(1×10m、N=160)で採食痕が発見された。さらに、優占種のうち1割以上のサブトランセクトで採食痕が見られたミツガシワ、カキツバタ、チゴザサの空間分布はある場所に偏ることはなく、採食痕も湿原全域にわたることから、シカは湿原全体を採食場所として利用していると考えられる。シカは陸上の生態系エンジニアとして機能することが知られており、深泥池湿原でもミツガシワ・カキツバタ・チゴザサへの大きな採食圧によって湿原植生を変化させる可能性がある。深泥池湿原植生を保全するためには、深泥池の植物群落を成立させている酸性で貧栄養な水質をけじめとして、植物群落分布とシカの影響を追跡調査しながら植生保護柵を設置することが必要である。

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