中学卒業直後に出産した女性が抱える社会的不利

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  • Assessing and Alleviating the Social Disadvantages Experienced by Educationally Impoverished Women with Children

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抄録

本研究の目的は,中学卒業直後に出産した低学歴の女性たちが,その後の生活で体験する社会的不利を明らかにし,その連続性に着目し構造化を試みることである.調査方法は,調査協力の承諾が得られた2事例を対象に,妊娠前,妊娠後から出産まで,出産後から現在までの3期に分け,これまで体験した困りごと,助けられた体験についてインタビューした.分析方法は,語られた内容を時間軸で整理し,(1)家庭環境 (2)教育(学校・家庭・社会) (3)保健・医療 (4)育児 (5)住宅 (6)雇用 (7)経済 (8)社会参加の8項目で分類し,その内容を明らかに,その関連性を見た.その結果,社会的不利は時間軸を中心に見ると,生まれてから妊娠までの本人の成育期(家庭・学校),妊娠・出産から仕事に出るまでの育児中心期,仕事に出た後の就労育児両立期に分けることができた.時期別にその内容と影響を見ると,生育期の親の経済力やその他のサポートは,育児中心期のみならず就労育児期においても大きく影響していた.しかし,本人の低学歴は,そのこと自体が子育てや職業選択に影響するというより,いくつかの不利と重なって影響していた.無計画な妊娠や見通しのない出産は,家族形成を破たんさせるリスク要因ではあるが,周囲の相談助言,経済的支援,育児支援,家計管理や家事等の指導等でその後の生活への影響を食い止められ,この時期の過ごし方が就労育児両立期に影響することが示唆された.就労育児両立期は,女性たちにとって初めての社会デビューとなる可能性が高く,就労条件や職場環境はその後の生活内容に直結する.そのため,中学卒業直後に妊娠出産する女性たちの支援は,妊娠届出後の早期に,就労育児両立期まで視野に入れた包括的な支援計画を立案し,保健・医療,福祉,教育,消費生活,就労等の多領域が切れ目なく支援する必要がある.

収録刊行物

  • 女性心身医学

    女性心身医学 18 (1), 146-154, 2013

    一般社団法人 日本女性心身医学会

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