MCI(軽度認知障害)と「前臨床期アルツハイマー病」のための 心理検査

書誌事項

タイトル別名
  • Neuropsychological Tests for Mild Cognitive Impairment and Preclinical Stages of Alzheimerʼs Disease
  • MCI(ケイド ニンチ ショウガイ)ト 「 ゼン リンショウキ アルツハイマービョウ 」 ノ タメ ノ シンリ ケンサ

この論文をさがす

説明

アルツハイマー病患者を対象とした治験はその殆んどが失敗したので、アルツハイマー病の治験は、アルツハイマー病と健常者の中間にあたるMCI(軽度認知障害)が盛んになり、MCI より前段階の「前臨床期アルツハイマー病」を対象とした治験も計画されている。また、研究でも多くのMCI や「前臨床期アルツハイマー病」の研究が進められている。本稿では、はじめに、「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)の診断基準(2011)」で推薦されているMCI 用の検査について述べ、「自由及び手掛りによる選択的想起検査(FCSRT-IR)」については詳しく紹介した。また、MCI およびアルツハイマー病の治験で広く用いられるADAS-COG の日本版(ADAS-COG-J)の妥当性と信頼性を評価した(杉下、竹内、逸見)。妥当性を検討するために、ADAS-COG-J とMMSE の日本版であるMMSE-J とのピアソンの相関係数を計算した。ADAS-COG-J にはADAS-COG-J-13 とADAS-COG-J-15 の2 種類がある。前者は13 項目からなりたっており、後者は前者に迷路課題と数字消去課題を加えた15 項目である。MMSE-J もMMSE-J-JADNI とMMSE-J-2001 の2 種類がある。前者は「注意と計算課題」として単語の逆唱を用い、場所の見当識課題として病院の名前を使用している。一方、後者は「注意と計算課題」として100-7課題を使用し、場所の見当識課題として建物の名前を使用している。健常者81 名、MCI 191 名および軽度アルツハイマー病患者59 名を対象として、妥当性と信頼性を検討した。妥当性については、ADAS-COG-J-13 とMMSE-J-ADNI のピアソンの相関係数を計算すると-0. 80 であり、ADAS-COG-J-13 とMMSE-J-2001 のピアソンの相関係数は-0. 81 であった。ADAS-COG-J-15 とMMSE-J-ADNI のピアソンの相関係数は-0. 80 であり、ADAS-COG-J-15とMMSE-J-2001のピアソンの相関係数は-0. 82であった。信頼性については、ADAS-COG-J-13とADAS-COG-J-15の信頼性はベースラインの得点と6 カ月後の得点の相関を求めて評価した。ADAS-COG-J-13 のベースラインと6 カ月後の得点のピアソンの相関係数は0. 91、ADAS-COG-J-15のベースラインと6 カ月後の得点のピアソンの相関係数は0. 91 であった。以上の結果から、ADAS-COG-J-13 とADAS-COG-J-15は十分な妥当性と信頼性を持つことが示された。次に、軽度認知障害(MCI)より前段階である「前臨床期アルツハイマー病」の治験であるAnti-Amyloid Treatment of Asymptomatic Alzheimer’s Disease(A4)で使用される予定の心理検査を紹介した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ