Bofutsushosan use for obesity with IGT: search for scientific basis and development of effective therapy with Kampo medicine

  • HIOKI Chizuko
    Department of Oriental Medicine, Tokai University School of Medicine
  • ARAI Makoto
    Department of Oriental Medicine, Tokai University School of Medicine

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抄録

メタボリックシンドロームを構成する疾病は, 単独でも動脈硬化症を発症させるが, 未病の段階で, これらの症候が重なると動脈硬化が進展する。 早期治療が最も重要である。 特に耐糖能異常 (impaired glucose tolerance : IGT) 患者は脳梗塞と冠動脈疾患を併せた心血管病の発症率が高いと報告があり, IGT は, メタボリックシンドロームの中心に位置する。 そこで東洋医学的診断による“肥満症”に適応が認められている防風通聖散が, 西洋医学的診断基準の肥満症, メタボリックシンドロームに有効であるかを IGT を伴う肥満症女性患者81名の協力により調査した。 その結果, 安静時代謝量を減少させずに体脂肪量の減少が見られた。 特に腹部内臓脂肪および胴囲が有意に減少し, インスリン抵抗性の改善が認められ, メタボリックシンドロームの改善に有効であると考えられた。<BR>この臨床研究展開に先駆けて, 防風通聖散の体重および脂肪減量効果が肥満動物を用いて調べられた。 保険適応のもとに使用されている漢方薬を, 現代疾病治療に活用する, つまり一定の範疇において西洋薬と同様に病名治療に使用するために, 作用機序が明らかにされている成分系と比較した実験研究が行われた。 ここではカフェインとエフェドリン併用における熱産生効果との比較がなされた。 その結果, 防風通聖散は熱産生組織である褐色脂肪組織を活性化し, 白色脂肪組織の脂肪分解を促進することが示された。 この効果は麻黄に含まれるエフェドリンにより交感神経が活性化され, さらに甘草, 荊芥, 連翹の持つフォスフォディエステラーゼ阻害作用 (カフェインの効果に類似) が相加的に働いた結果であることが明らかとなった。<BR>肥満症やメタボリックシンドローム予備軍の増加にもかかわらず, その有効な治療対策は見つけられていない。 フランスでは, エフェドリン・カフェインの合剤が, Letigen®として市販されてきたが, 2004年, 米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration) は, エフェドリンアルカロイドを含む栄養補助食品 (ダイエタリーサプリメント) の販売を禁止した。 日本では, β-アドレナリン受容体を刺激し, ニューロンを介して満腹中枢に促進的, 摂食中枢には抑制的に作用する食欲抑制剤が, BMI 35 kg/m2 以上の肥満症に限られ, 投与期間も 3 カ月間に限定され保険適応されている。 これらの生活習慣と密接に関わる疾病の世界的増加は, その予防や治療の難しさを物語っている。 そこで防風通聖散の肥満症患者に対する臨床効果を中心に, 西洋医学的治療における漢方適応の今後の国際的展望にむけて概説する。

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