運動場への開放とγ-アミノ酪酸(GABA)投与による離乳子豚の飼育管理由来ストレス軽減効果 : 福祉性評価指標の検討

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of allowing to use paddock and administering γ-amino acid for welfare of piglets
  • ウンドウジョウ エノ カイホウ ト ガンマ アミノ ラクサン GABA トウヨ ニ ヨル リニュウ コブタ ノ シイク カンリ ユライ ストレス ケイゲン コウカ フクシセイ ヒョウカ シヒョウ ノ ケントウ

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抄録

本実験では、離乳子豚に対して福祉的な飼育管理方法であると考えられる2種類の処理を行い、通常の飼育環境におかれた豚との間の行動学的、内分泌学的比較を行った。そこから、家畜豚の福祉性評価に有効な指標を検討することを目的とした。供試動物は7週齢から8週齢の去勢豚30頭を用いた。品種はランドレースと大ヨークシャーの交雑種(LW)とした。これらの供試豚を10頭ずつ、対照区、γ-アミノ酪酸(GABA)投与区、放飼区の3群に分け、同一面積の豚房に収容した。各豚房は全面コンクリート床で、広さは3.1m×3.6m(11.2m^2)であった。GABA投与区では、供試豚に対してGABAを20mg/kg/day経口投与した。一方、放飼区では豚房に屋外運動場(98.0m^2)を付設した。実験期間は3週間とし、体重、唾液中コルチゾール濃度、行動および外傷を定期的に測定した。行動観察は午前と午後の各3時間、個体維持行動の11項目を5分間隔の瞬間サンプリング法で記録するとともに、社会行動と葛藤行動の6項目を連続記録した。その結果、各処理区間において増体量、唾液中コルチゾール濃度ともに有意差はみられなく、正常範囲の値を示したことから、全処理区におけるストレスレベルは低いと考えられた。行動解析の結果、GABA投与区では休息が減少し、摂食、飲水および排泄が増加した。それに伴い、横臥位姿勢が減少した。また、闘争が減少し、葛藤行動である耳かじりおよび相互吸引が増加した。放飼区では休息、摂食、おが粉摂取および飲水が減少し、探査が増加した。それに伴い、立位姿勢が増加した。また、威嚇は減少し、遊戯は増加した。葛藤行動においては、耳かじりおよび柵かじりは減少し、相互吸引は増加した。外傷はGABA投与区と放飼区において、減少した部位がみられた。以上のように、行動発現ではそれぞれ異なる結果となり、その中でも遊戯と探査は処理による発現差が明確であった。また、最も活動性が高いと考えられる放飼区においても葛藤行動の発現が見られたこと、さらに葛藤行動は処理により量的な変化を示していたことから、供試豚はそれぞれの環境に適応するように葛藤行動を変化させていたと考えられる。以上のことから、福祉性評価に有効な行動指標としては遊戯行動、探査行動および葛藤行動が挙げられ、これらを総体的に捉えることが必要と考えられた。

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