台湾産の原始的な蛾Ogygioses caliginosa(鱗翅目,Palaeosetidae)の成虫行動について

  • HEPPNER John. B.
    Center for Arthropod Systematics Florida State Collection of Arthropods Bureau of Entomology

書誌事項

タイトル別名
  • Adult Behavior of the Taiwan Primitive Moth, Ogygioses caliginosa (Lepidoptera, Palaeosetidae)
  • 台湾産の原始的な蛾Ogygioses caliginosa(鱗翅目,Palaeosetidae)の成虫行動について〔英文〕
  • タイワンサン ノ ゲンシテキ ナ ガ Ogygioses caliginosa

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抄録

Palaeosetidaeという原始的な蛾には,オーストラリアのPalaeoses sp.,チリのOsrhoes sp.および東洋区のGenustes sp.とOgygioses spp.の5種が含まれる.チリの種はごく最近までコウモリガ科に所属すると判断されていた(NIELSEN and ROBINSON, 1983).Palaeosetidaeの生態については,TURNER(1922)によるオーストラリア産の本科の記載に成虫と生息地についての短いノートがあるだけで,そのほかはなにもわかっていなかった,ISSIKI & STRINGER(1932)の東洋区の種の記載にも,生態についてはなにも書かれていない.1985年の台湾蛾類調査の際,台湾の中央山地でOgygioses caliginosa ISSIKI and STRINGERの成虫を7月2-4日に観察できた.この場所は台南州嘉義郡奮起湖の近くで,標高は約1450mである.生息地は小さな溪谷で,川が流れており,植物が繁り,また苔で覆われた岩や木生シダがあった.TURNER(1922)も,クイーンズランドのPalaeoses scholastica TURNERについて湿った木生シダのある場所だったと述べている.彼は,成虫の飛翔活動についてはなにも記録していないが,シダや苔で覆われた枝などをスウィープして採集しており,この蛾を比較的不活発なものと考えた.台湾でもOgygioses caliginosaの成虫はほとんど飛ばないようであるが,飛ぶ場合は溪流沿いで曇った日でも晴れた日でも半日陰になる場所である.O.caliginosaの成虫の場合はほとんど溪流の植物に沿ってすれすれに飛んでいる.O.caliginosaの飛翔はかなりのろく,まっすぐに飛び,トビケラによく似ている.ネットなどをふって飛翔中の成虫をびっくりさせると,ただちに飛翔を中止し,林床に真っ直ぐ落ち,落ち葉の間でもっともらしく死んだまねをする.地面から1-2mの高さの大きな葉の裏で休息するのを好む.成虫が休息する時は翅を腹部の上に(屋根型に)畳み,葉上で中脚を前方に伸ばす.また前脚は休息には使用されず折り畳んでいる.成虫が飛ぶ前に苔に覆われた岩の上で休息しているのを一度だけみかけた.台湾では交尾を観察できなかったので,.O.caliginosaの食草は未知のままである.(文責編集部)

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 38 (1), 13-15, 1987

    日本鱗翅学会

被引用文献 (1)*注記

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