ベルリン・フンボルト大学付属自然博物館所蔵の東南アジア産シジミチョウ模式標本(続報)

書誌事項

タイトル別名
  • An additional catalogue on type specimens of Lycaenidae (Lepidoptera) from South East Asia, preserved in Museum fur Naturkunde der Humbold-Universitat zu Berlin
  • ベルリン・フンボルト大学付属自然博物館所蔵の東南アジア産シジミチョウ模式標本-続-〔英文〕
  • ベルリン フンボルト ダイガク フゾク シゼン ハクブツカン ショゾウ ノ ト

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抄録

1986年,筆者はベルリン・フンボルト大学付属自然博物館に所蔵される東南アジアのシジミチヨウの模式標本を調査する機会に恵まれ,いくつかの後模式の指定を行った(蝶と蛾,Vol.40, No,1).1990年同博物館を再訪し前回の補填調査を行い,それに基づき今回新たに後模式を追加指定した.このうちの主だった新知見は次の通り.なお,学名の取り扱いを変更すべき一部タクサには,出版の事情により別の刊行物(Takanami,1991)で既に後模式指定されたものがある.Caleta celebensis(Staudinger,1889)は既に前報で指摘した通り, Caleta roxus(Godart,[1824])とは別種と考えられる.今回その後模式指定を行い,♂交尾器を確認した.本種は今のところスラウェシ島のみから知られる. Caleta rhode cohaerens(Staudinger,1889), stat. n.は異なる産地の4個体,具体的には2♂(?) "Neu-Guinea",1♂"Wetter",1♂"Timor"に基づき記載された.これまでC. roxusの亜種と考えられていたが,今回その中のチモール産を後模式に指定することにより,♂交尾器の特徴からCaleta rhode(Hopffer,1874)の亜種に位置づけた.本種は基産地のスラウェシ島のほか小スンダ列島に分布し,Fruhstorfer(1918)によるロンボック島などのodon,スンパワ島のxisana, Heron(1894)によるダマール島のaustiniも恐らく本種に含まれるものと推測される.また副後模式となる残りの3個体のうち,"ニューギニア"産の1♂の交尾器はパラワン産などのC. roxus angustiorと全く区別がつかず,同地からの記録もその後皆無で,単に産地の誤認と考えられる. Jamides virgulatus(H. H. Druce,1895)の模式標本(恐らく単一個体)は, Toxopeusが研究用に集めたjamides箱の中に今回発見された.本種の名はこれまでjamides elpis(Godart,[1824])のボルネオ亜種に対して使用されていたが,実はaditja(Fruhstorfer,[1916])と同一のタクソンで,ジャワ産のcunilda(Snellen,1896)と同種と考えられる.記載年の関係からvirgulatus,今後種名として使用されることになる.なお,後模式の指定は既に「ボルネオの蝶,Vol,2, No.1」(1991)で行った. Nacaduba berenice berenice (Herrich-Schaeffer,1869)の模式系列標本と考えられる3♀のうち,2♀はJamides phaseli(Mathew,1889)と同種と考えられるが,残りの1♀は現在の取り扱いの通りのbereniceで,これを後模式とした.さらに,東南アジア島嶼部から知られるシジミチョウのタクサで,その模式標本がStaudingerのコレクションに含まれていると考えられ,これまでに発見できなかったものについて一覧に記した.その大部分は恐らく戦災で滅失したものと推測されるが,筆者の見落としや,あるいは今回のJamides virgulatusのように意外なところから発見されるものもあるかもしれない.また,都合により総模式の確認までにとどめたタクサについても一覧に加えた.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 43 (1), 35-46, 1992

    日本鱗翅学会

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