ラオスの蝶覚え書き(V) : 中部ラオス山地で発見されたアエローペヒメワモンの1新亜種の記載(鱗翅目,タテハチョウ科,モルフォチョウ亜科,ワモンチョウ族)

書誌事項

タイトル別名
  • Notes on the butterflies of Laos (V) : description of a new subspecies of Faunis aerope (Leech, 1890) (Lepidoptera, Nymphalidae, Morphinae) from a montane area of Central Laos
  • Notes on the butterflies of Laos (5) Description of a new subspecies of Faunis aerope (Leech, 1890) (Lepidoptera, Nymphalidae, Morphinae) from a montane area of Central Laos

この論文をさがす

抄録

Faunis(ヒメワモン)属は東洋区に分布するワモンチョウの1群で9種よりなる.その7種は東洋区南部の島嶼部から知られ,その中でF.canensだけは大陸部にも分布を拡げている.大陸部には他に2種が知られ,その1種F.aeropeは本属の最大種である.Monastyrskii(2004)によると種F.aeropeは西南中国およびベトナム北部に分布する名義タイプ亜種群とラオスおよびベトナムから知られるexcelsa/centrala亜種群に分けられる.前者では小型・前後翅裏面亜外縁の斑紋列が小さく・♂交尾器のvalvaが短いのに対し,後者では大型・上記斑紋列が大きく・valvaが長い.著者らは2007年以来ラオス第3の高峰Phou Samsoum(標高2620m)の山域で蝶類の分布調査を行っているが,その過程で大型・前後翅裏面亜外縁の斑紋列が大きい・♂交尾器のvalvaが短い特徴を持つF.aeropeの個体群を発見した.上記の他にも♂♀前翅表面先端-外縁部の黒褐色帯が幅広いなどの名義タイプ亜種との差異が認められるので,新亜種F.aerope montanaとして記載した.ランの1種(Coelogyne sp.)の葉上で終齢幼虫が発見され,この植物で飼育を続けたところ蛹化し4週間後に♂が羽化した.この幼虫は五十嵐・福田(2000)が図示したサルトリイバラ(Smilax sp.)を食するF.aerope aeropeの幼虫と背中の色彩が異なる以外は良く似ていた.本亜種は標高1900-2100mの常緑樹林帯に生息しており,地上1-1.5mの空中を緩やかに飛ぶ.他亜種に比べて高標高の山地に住むことからこの新亜種名を選んだ.ラオスより知られている亜種excelsaは小型で♂♀前翅表面先端-外縁部の黒褐色帯はmontanaと比べると不顕著で狭く,その♂交尾器のvalvaは遥かに長い.さらに,excelsaは中部ラオスの低山地(550-620m)の竹林に生息し迅速に飛翔する.これらの差異を考慮すると,aeropeとexcelsaは別種であるかも知れないとするMonastyrskii(2004)の意見は妥当であると判断される.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 60 (4), 277-284, 2010

    日本鱗翅学会

参考文献 (10)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ