クリハモグリガ(ハモグリガ科)に関する生態学的知見

  • 小林 茂樹
    Entomological Laboratory, Graduate School of life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University

書誌事項

タイトル別名
  • Biological notes on Lyonetia (Lyonetiola) castaneella (Lepidoptera: Lyonetiidae), with a new hostplant from Japan

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抄録

原記載以降,ほとんど記録がなかったクリハモグリガについて分布,寄主植物,幼生期などの情報を追加した.クリハモグリガLyonetia (Lyonetiola) castaneella Kuroko, 1964 本種はKuroko(1964)によって福岡県英彦山産の標本(1954-1955年黒子浩採集)をもとに記載され,後に大阪府箕面産の標本(1975年斉藤寿久採集)が追加記録されたが,それ以降は追加記録がなく,幼生期はKuroko(1964)による記述のみの簡単な記録があるだけで詳細な報告はなかった.著者は,2015年8月中旬から10月中旬に奈良県曽爾村,三重県名張市においてイヌシデ(カバノキ科)とクリ(ブナ科)にそれぞれ潜るハモグリガ幼虫を採集した.当初は,先端が枯れた葉と思われたが,幼虫と糞粒が確認でき,羽化した成虫を検討した結果,交尾器の特徴などから本種と同定した.(原記載では,エデアグス先端の結節構造は小さく描かれているが,実際はエデアグスの長さの1/3に達する).分布と寄主を追加するとともに,これまで報告がなかった幼虫の潜孔,蛹,マユなどの写真を図示した.幼虫は,寄主植物の低い木の若い枝に発生し,柔らかい新葉のみでみられた.潜孔は不規則な斑状で葉の先端付近からやがて葉身全体に拡がった.糞粒の一部は潜孔表面に開けた無数の小孔から排出された.イヌシデでは,糞粒は複数のかたまりで潜孔中に残され,排出は確認できなかった.幼虫は,一つの潜孔に1〜3個体の幼虫が確認でき,孵化から7日程度で摂食を完了して潜孔を脱出した.葉の被摂食部分は萎縮して茶色く枯れたようになりやがて脱落した.これまで本種の採集記録が少なかったのは,発生が展葉初期の葉に限られること,古い潜孔が枯葉にみえることなどのためと考えられる.寄主植物:クリ,クヌギ(ブナ科),イヌシデ(カバノキ科)(新記録),国外ではハンノキ(カバノキ科)が知られる.分布:本州:大阪府,奈良県(新記録),三重県(新記録),九州:福岡県;国外ではロシア沿海州.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 66 (3-4), 90-95, 2015

    日本鱗翅学会

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