ミトコンドリアDNA解析によって明らかになったカラスアゲハ亜属(アゲハチョウ科アゲハ千ョウ属)の系統,生物地理,斑紋の収斂現象

  • 八木 孝司
    Laboratory of Environmental Genetics, Frontier Science Innovation Center, Osaka Prefecture University
  • 佐々木 剛
    Department of Biophysics, Graduate School of Science, Kyoto University:(Present office)Biohistory Research Hall
  • 尾本 惠市
    International Research Center for Japanese Studies:(Present office)The Graduate University for Advanced Studies

書誌事項

タイトル別名
  • Phylogeny, biogeography and wing pattern convergence of the subgenus Achillides (Lepidoptera, Papilionidae, Papilio) revealed by a mitochondrial DNA sequence analysis

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抄録

日本を含む東アジアに主に分布するカラスアゲハ亜属各種の系統関係をミトコンドリアDNAのND5遺伝子部分配列によって解析した.その結果,カラスアゲハ亜属は2つのグループに大きく分かれることがわかった.第一のグループにはカラスアゲハ,クジャクアゲハ,ミンドロカラスアゲハ,タイワンカラスアゲハが含まれる.第二のグループにはミヤマカラスアゲハ,シナカラスアゲハ,タカネクジャクアゲハ,オオクジャクアゲハ,ホッポアゲハ,ルリモンアゲハ,カルナルリモンアゲハが含まれる.各グループの種間には斑紋の共通性があるわけではなく,グループ間にいくつかの斑紋が似た種の組み合わせが存在する.たとえば中国四川省のガラスアゲバとミヤマカラスアゲハ,北インドのクジャクアゲハとルリモンアゲハなどである.このことは2グループの分岐後にグループ間の種どうしで翅の斑紋の収斂が起こったと考えられ,平行進化の一例といえるかもしれない.各地度のガラスアゲバは4つのグループに大さく分かれることがわかった.すなわち第一はトカラ列島以北の日本列島・サハリン・朝鮮半島度,第二は奄美大島・徳之島・沖縄島産,第三は八重山諸島度,第四は中国大陸南部・台湾諸島産である.これら4グループのDNA配列の違いは,各々が種であるとしても妥当なほど大きい.また,カラスアゲハ原名亜種とクジャクアゲハのDNA配列,ミヤマカラスアゲハとシナカラスアゲハのDNA配列は同じかほとんど違いがなく,これらはそれぞれ同一種であることを強く示唆する.ネッタイモンキアゲハは幼虫と蛹の形態からカラスアゲハ亜属と分類されることがあったが,シロオビアゲハ亜属とすべきであることがわかった.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 57 (2), 137-147, 2006

    日本鱗翅学会

参考文献 (31)*注記

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