胎児食道閉鎖症におけるポーチサインの描出

DOI
  • 高村 奈緒美
    川崎協同病院検査科 神奈川県立こども医療センター新生児科
  • 川滝 元良
    東北大学産婦人科 神奈川県立こども医療センター新生児科
  • 須波 玲
    山梨県立中央病院総合周産期母子医療センター産科
  • 石川 浩史
    神奈川県立こども医療センター産婦人科

書誌事項

タイトル別名
  • Visualization of Pouch Sign in Congenital Esophageal Atresia Cases

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抄録

<p>目的:先天性食道閉鎖症は羊水過多,胃胞の欠如または小さいという超音波所見からスクリーニングされるが,同様な所見を呈する疾患との鑑別が困難なため,胎児診断率は44%と低率である.我々は,ポーチサイン(PS)の描出率,食道閉鎖症のタイプや合併奇形の有無とPSとの関係性について検討した.</p><p>対象と方法:2011年1月~2015年4月までに神奈川県立こども医療センターで出生後に食道閉鎖症と診断された28例のうち,胎児期に詳細な超音波検査を施行し本症を強く疑った17例について,PS陽性群とPS陰性群の2群に分けて,Gross分類,胃胞の有無,染色体異常の有無,合併異常の有無,母体苦痛緩和のための羊水穿刺回数,妊娠期間中の最大の羊水量(AFI)を後方視的に検討した.</p><p>結果と考察:対象17例のGross分類はC型13例(76%),A型4例(24%)であった.対象例のPS陽性は9例(53%)であった.最も早くPSを描出し得た例は30週であった.Gross分類別のPS陽性率を比較したところ,C型では54%(7/13),A型では50%(2/4)であり,Gross分類間で有意差を認めなかったことから,PS所見の有無でGross分類を予測することは困難と考えられた.18トリソミーのPS陽性率は33%と低率であり,胎児の嚥下とPS描出の関連が示唆される.合併疾患としては,VATER連合では全例でPS所見を認めた.先天性心疾患,胃胞描出の有無などではPS陽性率に差はなかった.</p><p>結論:胎児診断された食道閉鎖症では約半数でPS所見を認めることから,食道閉鎖症を疑った場合,ポーチの存在を念頭に置き胎児頚部を経時的に観察,描出することにより胎児診断率が上昇すると考える.</p>

収録刊行物

  • 超音波検査技術

    超音波検査技術 42 (6), 631-636, 2017

    一般社団法人 日本超音波検査学会

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