低温条件下でのトマト根域加温が根の生育,生理活性,養分吸収ならびに果実収量に及ぼす影響

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  • Effect of Root-zone Heating on Root Growth and Activity, Nutrient Uptake, and Fruit Yield of Tomato at Low Air Temperatures

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抄録

トマト施設生産において低温障害を緩和するとともに,原油価格高騰による光熱費の増加を抑えるために低コストな加温技術が求められている.本研究では根域加温の生理学的・形態学的知見を得ることを目的に,トマトを NFT 水耕により栽培し,根域加温として培養液を加温した場合の影響を調査した.根域加温の短期的影響として,生育,養分吸収,根の活性の指標となる出液速度および根呼吸速度,根の IAA 濃度,根の内部形態を調査し,長期的影響として果実収量を調査した.根域加温により,最低根域温度は 16.6°C となった.一方で最低気温および根域加温をしない対照区の根域温度はそれぞれ 5.9°C および 5.8°C となり,低温障害が発生するのに十分な低温であった.根域加温開始から 7 日で,無機養分の吸収と出液速度が促進し,根の乾物重および相対成長速度は培養液を加温しない対照区より増加した.また,これら地下部特性の変化により,処理 21 日目において地上部の乾物重も増加が促進された.根の内部形態は,表皮部および木部を含む中心柱部分ともに同程度の肥大が観察され,木部の特異的肥大が観察された高温期における根域冷却とは異なる結果が示された.収穫期における部位ごとの乾物分配率は根域加温の影響は認められなかったが,根域加温により全体の乾物重が増加した結果,果実収量および 1 果あたりの果実重は増加した.以上のことから,低温期の根域加温は,高温期の根域冷却と同様に根の活性を促進し,根の生育促進および遅れて地上部の生育を促進するため,低温期の低コストな温度管理技術として有効であることが示されたが,全体的な生育促進の効果が大きく,特定の組織の発達や生理活性の変化が認められた高温期の根域冷却とは作用が異なる可能性が示された.

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