日本のウリ科野菜におけるウイルス病抵抗性育種および抵抗性素材の現状

  • 杉山 充啓
    農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所

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タイトル別名
  • The Present Status of Breeding and Germplasm Collection for Resistance to Viral Diseases of Cucurbits in Japan

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抄録

キュウリおよびメロンは主要なウリ科野菜である.病害および害虫の発生は,野菜生産において非常に大きな問題であり,抵抗性品種の利用は病害の防除に最も有効な手段の一つである.ウリ科野菜では,様々なウイルス病抵抗性素材が報告され,今までに多くのウイルス病抵抗性品種が育成されている.本総説では,近年におけるウイルス病抵抗性育種および抵抗性素材の現状と,日本で発生し問題となっている 4 種のウイルス病抵抗性育種および抵抗性素材について報告する.メロン黄化えそウイルス(MYSV)およびウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)は,世界において日本が初発生の昆虫媒介性のウイルスである.実用的な抵抗性品種は育成されていないが,MYSV 抵抗性キュウリおよび CCYV 抵抗性メロンが遺伝資源から見いだされた.キュウリ系統 27208930 は MYSV に対して中程度の抵抗性を有する.本抵抗性は温度依存型で,低温条件(20℃)において 27028930 は,メロンから分離された MYSV-S 株に対して全身感染しないことが明らかとされている.メロン系統 JP138332 は,CCYV に対して強度抵抗性を示す.これらの 2 系統は,抵抗性品種育成のための有望な素材であると考えられる.スイカ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)およびメロンえそ斑点ウイルス(MNSV)は,土壌伝染性のウイルスである.韓国原産のメロン品種‘Chang Bougi’は CGMMV-SH 系統に抵抗性を有し,‘Chang Bougi’が有する抵抗性は,劣性の 2 遺伝子(cgmmv-1cgmmv-2)により支配される.メロンにおける MNSV 抵抗性は,劣性の 1 遺伝子(nsv)により支配され,本遺伝子を導入した実用品種は MNSV の防除に利用されている.近年,他のウイルスに対する抵抗性品種の育成が強く要望されている.これらの要望や問題を解決する手段として,コアクレククションは,遺伝資源から抵抗性素材を効率的に特定するために有効である.また,新たな品種をより早く確実に育成できる方法として分子マーカーによる選抜が必要であろう.

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