歯科治療後も継続する歯痛にトリガーポイント注射を使用した一症例

DOI
  • 山﨑 陽子
    東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック
  • 井村 紘子
    東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック
  • 細田 明利
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔顔面痛制御学分野
  • 新美 知子
    東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック
  • 川島 正人
    東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック
  • 嶋田 昌彦
    東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニック 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔顔面痛制御学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Case Report of Trigger Point Injection for a Persistent Toothache after Dental Treatment

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抄録

症例の概要:患者は62歳女性である.下顎左側第一大臼歯の急性化膿性根尖性歯周炎を発症し,近歯科医院にて根管治療を行った.しかし,根管治療が終了した後も自発的な鈍痛が残存するため当科を受診した.初診時は下顎左側第一大臼歯特発性歯痛と診断したが,診察の結果,左側咬筋,胸鎖乳突筋および側頭筋に広範囲な硬結を触知し,左側咬筋の圧迫によって下顎左側第一大臼歯の痛みの増悪を認めた.そこで筋・筋膜性歯痛と診断し,左側咬筋にトリガーポイント注射をおよそ2週間ごとに行った.3回目の注射終了後には歯痛が消失し,最終補綴を行った後も症状は悪化せず,当科終了となった.<br>考察:本症例は,急性化膿性根尖性歯周炎,筋・筋膜性歯痛および特発性歯痛が複雑に絡み合い,痛みの悪循環によって筋・筋膜性歯痛が増強されたと考える.また,本症例はトリガーポイント注射が奏効し,下顎左側第一大臼歯の痛みは消失した.これは,筋・筋膜性歯痛の場合,痛みの根源は筋および筋膜にあるため,筋肉に対する治療が痛みの消失に寄与したと考える.<br>結論:歯科治療を行っても残存する歯痛には,筋・筋膜性歯痛の存在を疑う必要があると思われた.また,筋・筋膜性歯痛が疑われる場合は,トリガーポイント注射は症状の改善に有効な治療法の一つであることが示唆された.

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