若年者乳癌と高年者乳癌の臨床病理学的比較検討

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タイトル別名
  • CLINICOPATHOLOGICALLY COMPARATIVE STUDY BETWEEN BREAST CANCER OF YOUNG WOMEN AND OF ELDERLY WOMEN
  • ジャクネンシャ ニュウガン ト コウネンシャ ニュウガン ノ リンショウ ビョ

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説明

最近10年間の原発乳癌手術例160例のうち, 34歳以下16例を若年者乳癌症例, 70歳以上21例を高年者乳癌症例として,両群の臨床病理学的比較検討を行なった.<br> 若年者群は28から34歳,平均31.1歳,高年者群は70から85歳,平均75.5歳である.<br> 病悩期間は, 6カ月以上の長期の症例は若年者群:56%が高年者群:38%より多く,腫瘍径も5cm以上の大きい症例は若年者群: 32%が高年者群: 18%より多い.すなわち若年者群の方が病悩期間も長く腫瘍径も大きい進行した症例が多い傾向がみられる.<br> 初診時の臨床診断は,高年群の91%が乳癌・乳癌疑診であるのに比し,若年群では乳癌:19%,乳癌疑診:31%であり,他には線維腺腫:38%が多い.試切の比率は若年群: 81%が高年群:48%より多い.<br> 高年者群にTO乳癌が2例あり,いずれも血性乳頭分泌を主訴とし, microdochectomyで確定診断した非浸潤癌である.最近2年3カ月の間のmicrodochectomy施行症例は28例で,うち4例(14%)が乳癌であり,乳癌例の平均年齢が69.3歳であることより,高年者の乳頭異常分泌例に対しては積極的な乳管造影, microdochectomyが必要と考えられる.<br> 手術術式は若年者群は1例を除いて定型あるいは拡大術式を施行しているが,高年者群は単乳切,非定型が81%である.高齢によるリスクの点より仕方のない面もあるが,今後非定型的乳房切断術の適応の検討により少しでも根治性の高い術式を選択したい.<br> 組織型は,若年者群は乳頭腺管癌が多く,高年者群は髄様腺管癌の症例が多い.<br> 組織学的腫瘍悪性度は若年者群はGrade IIIが最も多く,次いでGrade II,高年者群はGrade IIが最も多く,次いでGrade IIIの順である.<br> 若年者乳癌の問題点は,病悩期間の短縮と早期発見,外来鑑別診断にあり,高年者乳癌は乳頭異常分泌例の確実な処置と手術術式の適格な選択にあると考えられる.

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