甲状腺血管腫の3治験例と文献的考察

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タイトル別名
  • THREE CASES OF HEMANGIOMA OF THE THYROID AND REVIEW OF THE LITERATURE
  • コウジョウセン ケッカンシュ ノ 3 チケンレイ ト ブンケンテキ コウサツ

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抄録

甲状腺に発生する血管腫は極めて稀なものであるが,最近教室では甲状腺海綿状血管腫の3症例を経験したので報告するとともに,内外の文献的報告例を集計し,考察を加えた.<br> 〔症例1〕57歳,女性. 20年前に前頚部腫瘤を指摘され, 3年前より急速増大をみた.甲状腺右葉に手拳大,弾性硬,表面平滑,多少可動制限のある腫瘤を触知する.癌の疑いをおいて右葉切除.腫瘤は8×6.5×3cm, 180gで,厚い線維性被膜に包まれ,内部は血液凝塊と壊死巣が混在していた.<br> 〔症例2〕4歳,男児. 1年前に前頚部腫瘤に母親が気付き,徐々に増大した.腺腫の診断下に手術すると,錐体葉に青色調の内容が透見される小嚢胞状腫瘤があり,これを剔出した. 1.8×0.9×0.3cm, 3gで血液を混じた海綿状構造を示した.<br> 〔症例3〕46歳,男性. 20年前に前頚部腫瘤に気付き,徐々に増大. 1ヵ月前の発熱時より急速増大,圧迫感,体重減少を訴えた.右葉に可動性不良の巨大腫瘤があり,一部に膿瘍化をみた.穿刺吸引細胞診は血性液が吸引され,悪性像はない.右葉切除で,腫瘤は14×10×9.5cm, 590gであった.以上3症例とも組織像は海綿状血管腫であった.<br> 甲状腺血管腫の文献的報告例は今回の3例を含めても14例と極めて稀なものである.年齢は生後21日~57歳までにわたり,男女比は7:6である.急性増大や圧迫症状を伴う症例があり,腫瘤もかなり大きくなるものもあるが,今回の症例3の14cm大, 590gが最大である.術前診断はほとんど困難であり,腺腫ないし癌の疑いにて手術を行ない,組織学的にはじめて判明されることが大部分である.治療は健常甲状腺を含めた腫瘤別出術にて,その予後は全く良好である.

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