高齢者の胸部外科手術,ことに肺癌症例を中心に

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タイトル別名
  • THORACIC SURGERY OF AGED PERSONS-WITH SPECIAL REFERENCE TO LUNG CANCER
  • コウレイシャ ノ キョウブ ゲカ シュジュツ コト ニ ハイガン ショウレイ

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説明

高齢者胸部外科手術の特異性を探り,適応の確立を図ることを目的として,65歳以上の60例の検討を行なった.なお対照群としては50~64歳の96例をとった.<br> 高齢群60例の内訳は,肺癌45例(75%), 良性腫瘍,炎症,嚢胞性疾患などが各々3例である.対照群96例では肺癌34例(35%), 炎症38例,嚢胞性疾患15例などである.<br> 術前の肺機能は,高齢群では1秒率がやや低く,残気率がやや高かった.腎機能では高齢群でPSP値がやや低かったが,いずれも有意差を示すものではなかった.<br> 術後人工呼吸器を2日以上使用した例の,術前肺機能は両群とも非使用群に比して,比肺活量, 1秒率,分時最大換気量率が低く,残気率が高かったが,有意差ではなかった.肺切除及び腫瘤剔出例のみについて換気機能図をみると,高齢群では混合型障害群において,人工呼吸器使用頻度が大きかった.一方対照群では, 1秒率70%の上下にて,人工呼吸器使用頻度の差がみられた.更に長期に亘り人工呼吸器使用を要した例では,ことに高齢群において1秒率が50%以下の混合型障害例にみられた.<br> 死亡例は高齢群で4例, 6.6%,対照群で1例1%であるが,全て肺切除以上の手術例であった.死因は呼吸障害1例,心不全1例,消化管出血1例,抗生物質による紅皮症1例であったが,今後改善の余地があるものと思われる.<br> 結論として,高齢者の胸部手術,ことに肺切除例では術前の呼吸機能が混合型障害の場合には,術後呼吸管理上の問題を来たす可能性があると考えられる.しかし適応を慎重に選べぱ手術は安全に行われると思われる.<br> 術後管理の点からは,人工呼吸器の適切な使用,心.肝・腎機能のチェックのみならず,精神面での術前・術後の指導にも充分の配慮を要すると考えられる.

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