ハクセンシオマネキの生活史と個体群生態学的研究(予報)

書誌事項

タイトル別名
  • Preliminary report on life history and population ecology of a fiddler crab, Uca lactea (De Haan)

抄録

バクセンシオマネキ(Uca (Austruca) lactea (De Haan))はシオマネキ類(酒井恒:日本産蟹類(1976)によれば、我国には合計8種のシオマネキが棲息している)の中では我国でもっとも広く分布している。伊勢湾以南に分布しており、瀬戸内海、土佐湾、大村湾、天草島などに棲息している.我国のシオマネキ類の甲では小型であり、特に大きな個体でも甲幅は20mmくらいである。波浪の影響をうけない砂泥質の干潟に深さ15~2nCmの巣孔をほって、その巣孔の周辺の表面の底質をはさみ脚ですくいとり、その中に含まれる微小生物や有機質を食物としている。摂食範囲は棲息密度や底質の状態によって異なるが、通常、巣孔から半径40cmの円内である,天草においては、1年のうちで活動するのは3月下旬~11月上旬であり、その他の季節には活動を休止して巣孔の入口を閉ざしたまま中にはいっている。しかし、この期間であっても、冬眠状態にあるのではなく、温度が特に高い日があれば、姿を現わして活動する。また、活動期間中であっても、活動は天候や潮汐の影響を大きくうけている。完全昼行性であり、日中にしか活動しないが活勧が特によいのは最大干潮時がおよそ正午になるような日である。雨の日には活動しない。 生殖期は夏であり、6月上旬にはdisplayが開始される。しかし、特にそれが活発になるのは7月下旬~8月上旬である。産卵は年1回がふつうであり、2回産卵するのはごく一部である。雌は産卵後、卵を腹部に付二着させて巣孔の中で孵化するまで過ごす。孵化したゾエア幼生は海中でプランクトン生活を送り、メガロバ幼生に変態した後に干潟へ戻ってくる。その際に何等かの感覚で場所の選択を行っており、干潟の中でバクセンシオマネキが分布している場所に集中的に定着をする。定着後2~3日で第1幼ガニに変態する。幼ガニの生活は成ガニとほとんど同じで、巣孔をほり、その周辺の底質をすくいとって摂食している。生後1年目の夏には雄はdisplayをするようになる。しかし、雌はごく一部の例外を除くと産卵せず、2年目の夏にはじめて産卵するようになる。

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ