SWAP-200によるパーソナリティ障害の理解:DSM-IV II軸との相違と日本の心理臨床への適用の可能性

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タイトル別名
  • Introduction of the SWAP-200 as a new language to understand personality disorders in Japanese clinical psychology.

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説明

本稿はWesten and Shedler (1999)が作成したShedler and Westen Assessment Procedure (SWAP-200)によるパーソナリティ障害の理解を、DSM-IV II軸のそれと比較しながら紹介することを目的としている。ここ20年余、パーソナリティ障害理解の共通言語として流布してきたDSM-IV II軸には統計的妥当性は高いが、臨床的観察との隔たりがあり、治療に役に立たない、病理の理解が進まないといった声が上がっていた。その隔たりの原因としては、同一の被診断者に複数の診断名がついてしまうという収束性•弁別性の問題、既存の診断基準をトップダウン的に当てはめてしまうだけで、新しい発見が反映されない分類法の問題、診断プロセスにおいて、内省が欠けがちな被診断者の自己申告が優先され、臨床家の専門的な観察が排除されてしまっている問題などが指摘されてきている。DSMは、統計的な妥当性や信頼性に基づいた客観性を強調する「科学の知」を高めるため、個々人の独自性を理解する感覚、いわゆる「臨床の知」を犠牲にしたところがあり、昨年、出版されたDSM-Vでも、パーソナリティ障害に関してのこれらの問題は未だ解決されていない。一方、SWAP-200は、専門用語を使わず描かれたパーソナリティ特性200項目をQソート法で分類することでパーソナリティ障害を捉らえられるよう作成されている。この200項目はDSMなど既存のアセスメント尺度の記述を基に作られ、さらに活用した臨床家からのフィードバックをもとに幾度か改訂がなされてきた(内容的妥当性の担保)。収束的・弁別的妥当性に関しても諸外国ですでに確認にされており、国を越えて使用可能とアセスメントや過程研究に使われてきている。同様に日本でも活用が可能であると思われるが、その際には項目内容が日本人のパーソナリティ特性や傾向を適切に捉えられているか検討する必要がある。またSWAP-200はボトムアップ的にいわゆる「臨床の知」を反映するように企図されているが、それはすなわち、臨床家の偏見にも影響を受けてしまいやすいということも意味している。日本にSWAPを導入する際は、臨床家が適切に且つ効果的にクライエントの利益になるよう、SWAP-200を活用できるようなサポート・システムが整えられることが望まれる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680298788736
  • NII論文ID
    110009889761
  • DOI
    10.24581/nihonbashi.14.0_75
  • ISSN
    18842518
    13480154
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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