ベスト・コメンテイターとしてのギャリック -『マクベス』を実例として-

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タイトル別名
  • David Garrick as the Best Commentator of Shakespeare and His Production of Macbeth
  • ベスト ・ コメンテイター ト シテ ノ ギャリック : 『 マクベス 』 オ ジツレイ ト シテ

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抄録

デイヴィッド・ギャリックは、役者・劇作家・劇場経営者としてのその長い生涯において、シェイクスピアの作品を連続して改訂し、上演することで、同時代の人々によって「シェイクスピアの最も偉大で最良のコメンテイター」として賞賛され続けることになる。ところが、彼が上演のために自ら改訂したテキストは、そのテキストに基づく上演がプレイビルや出版物でしばしば「シェイクスピアによって書かれた通り」と宣伝されていたにも関わらず、シェイクスピアの原作とは、時に抜本的に異なるものであった。本論は、シェイクスピアの作品の中でもギャリックが初めて改訂を施し、しかもその後のシェイクスピア作品の特徴を共有している『マクベス』を取り上げ、そのテキストを18 世紀の文脈の中に位置づけながら、特に18 世紀前半までロンドンで唯一上演されていた『マクベス』であるウィリアム・ダヴェナントの改作との比較を行うことで、18 世紀の観客や批評家たちがギャリックのシェイクスピア作品の上演を「シェイクスピアによって書かれた通り」の上演として受容し、称賛していた理由を明らかにする。そのために、本論では、音楽性とスペクタクル性の重視、プロットの問題、そして、彼の演技の特徴という、特に彼の『マクベス』上演に特徴的な3 つの側面について考察する。これらの考察を通して、18 世紀当時のロンドンにおける観客の嗜好や思潮の一端を明らかにすると同時に、ギャリックがどのような方法でテキストに改変を加え、自らの演技を活用することで、観客や批評家たちが「シェイクスピアによって書かれた通り」と認める『マクベス』の上演を実現していたのかを明らかにする。

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