EGPA,診断と治療の進歩

  • 谷口 正実
    独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター

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説明

【概念,発症要因,臨床症状】EGPAの臓器病変は,強い上下気道の好酸球性炎症(好酸球性鼻茸と 重症喘息±好酸球性細気管支・肺炎)が基本にあり,さらに全身の好酸球性炎症と小血管炎に伴う 全身所臓器の虚血性変化が加わる.発症要因として,アレルゲン免疫療法やワクチン接種,抗ロイ コトリエン薬が疑われているが明らかな証拠はない.最近では,女性や(男女比は1:2に),高齢 者の発症が増えている印象がある.臨床症状では,先行する喘息が90%以上で認め,血管炎発症 時の多発性単神経炎をほとんどの例で認めるのが特徴である.心障害,副鼻腔・肺病変,消化管 障害,皮膚病変も軽度のものを含めると2/3に認める.気道症状は重症喘息と好酸球性細気管支肺炎, 鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎・中耳炎が多い.アトピー素因は強くなく,典型的なアレルギー性 鼻炎も多くない.腎障害は20%以下で軽微な例が多い. 【先行喘息の特徴】喘息は思春期以降発症が主であり,血管炎発症前から重症で好酸球増多が 目立つ.アトピー素因は半数以下にしか認めず,かつ強いアトピー体質はない.重症度をマッチ させた非EGPA喘息例と比較すると,平均総IgE値は同等(300台)であるが,特異的IgE陽性率や アレルゲン皮膚テスト陽性率は低い(38% vs 80%).血管炎発症前の気道過敏性は,喘息が重症 にもかかわらずむしろ軽微で,発症後にはEGPAが寛解状態下でもβ刺激薬吸入後の1秒量が低値 (持続的気流閉塞)を呈しやすい.EGPA発症後は,血管炎再燃の指標として末梢血だけでなく 喀痰の好酸球増多が有用とする報告がある. 【ANCAの意義】近年の海外報告や自験成績では,ANCA陽性率は高くない(30︲37%).ANCA 陽性例ではMPA様の病態,すなわち腎障害が有意に多く,陰性例では心障害が多い. 【予後】劇症型は数%以下であるが,治療抵抗性で極めて予後不良である.心障害は強い予後不良 因子であり,高齢発症も予後不良である.末梢神経障害は,従来療法に抵抗性で患者QOLを大きく 損なう.5年生存率は90%程度であるが,10年以降の生存率は70%以下で良好ではなく,治療薬に よる感染などが影響している. 【治療】基本治療はステロイドが必須で,中等症以上でIVCY併用とされているが,軽症でも IVCYを併用すると安定化しやすい.残存する心障害,神経障害にはγgl大量療法(IVIG)が 奏効しやすい.IVIGにはステロイド減量効果(半分量に減量可能か?)もあり,3番目の治療法 として推奨できる.最近では,抗IL5抗体の著効成績,さらにOmalizumab(抗IgE),rituximubの 奏効例が報告されており,近い将来,これら生物学的製剤の併用が,EGPAの予後をさらに改善 する可能性がある. 〔共催:帝人ファーマ株式会社〕

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