データ解析の考え方

書誌事項

タイトル別名
  • データ カイセキ ノ カンガエカタ

この論文をさがす

抄録

いわゆる数理統計学と異なった立場のものとして, 「データ解析」というものが生まれてきた。しかし, その内容はさまざま各人各様で, 何となく「それらしいあたり」を議論しているのである。いま得られているデータからどう情報をとり出すか, ということを主な狙いとすることは共通の点であるが, その得られているデータの背景をどこまで考慮するかという点になると差が大きくなる。この点は後で触れよう。たしかに「データ解析」という名前はそう古いものではないが, J.W.TukeyがThe Future of Data Analysis (Annals of Mathematical Statistics Vol.33, 1962) が発表されてから数理統計学の世界で有名になってきた。しかし, 日本においては「統計数理」の名において, 1947年ごろから「データによる現象解析」を志向した動きがあった。どうデータをとり, どう解析して情報を取り出すかという立場が表明された。しかし, 「データ解析」という言葉は使われていなかった。いわゆる推定論, 検定論を中心とする数理統計学に反旗をひるがえし, サンプリング調査によりデータを獲得することを土台にして, データを分析することを考えていたのである。<BR>それはさておき, データ解析というとき, 英米流 (英語を話す地域という意味である) の数理統計学的発想のデータ解析とTukey流データ解析 (数理統計学を主体とする前記英米流ではない)・日本流 (といっても日本はEnglish speaking peopleに属すると見做されており, 日本で数理統計学を研究する人とは前述の英米流に属している, 日本において, 数量化・分類-クラスター化-行動計量学を中心にする人々がここでいう日本流である)・フランス流 (フランス・イタリア・スペイン・東欧・アフリカ・中南米など) のそれとは内容が異なっている。英米流では推論的統計学 (推定論・検定論・統計的決定理論, あわせてinferential statisticsという) からやはり離れられないのである。フランス流は, 表現の問題が中心であってdescriptive statisticsと胸を張って言い, 単純なinferential statisticsを見下しているのである。Tukeyによるデータ解析は英米流から抜け出ており, その内容はexploratory data analysis (探索的データ解析) と言い, 統計量統計学からの脱皮, 素直にデータを眺め情報をさぐり出すという立場をとっており, 日本流, フランス流に近い形になっている。<BR>データ解析という言葉が英米圏から出たにもかかわらず, inferential statisticsをぬけ切らぬ形でデータ解析が発展してきているのは注目に値する。<BR>以下に日本流, Tukey流, フランス流について説明しよう。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ