病理から見たサルコイドーシスの鑑別診断

書誌事項

タイトル別名
  • 各種検査法の有用性と問題点

抄録

サルコイドーシス(サ症)の診断において非壊死性類上皮細胞肉芽腫(以下肉芽腫)の存在は組織診断群として重要であるが、非壊死性肉芽腫はサ症以外でも多くの疾患で認められる。本シンポジウムでは主に肺におけるサ症類似の肉芽腫を示す疾患の鑑別、サ症と他疾患との合併の判断について述べる。1.類上皮細胞肉芽腫がみられる疾患の鑑別1)サ症でみられる肉芽腫は平均 200μm 大の境界明瞭で、主に気管支・血管束、胸膜、小葉間隔壁など広義間質のリンパ管に沿って分布し、血管侵襲も高頻度である。この肉芽腫の分布の特異性は経気道吸入による過敏性肺炎(HP)、抗酸菌症の肉芽腫分布との大きな差になる。しかし非定型抗酸菌症との鑑別は容易ではない場合がある。また融合性肉芽腫では壊死を伴うことは稀ではない。P.acnes モノクローナル抗体では VATS で 74%に肉芽腫内に陽性顆粒が認められる。2)HP の肉芽腫はサ症よりも小さく、疎で、肺実質では通気路に沿っての分布が特徴的であるが、まれに血管壁や胸膜に肉芽腫がみられる。いっぽうサ症でも HP に類似の肉芽腫が見られる例がある。3)壊死性サルコイド肉芽腫症(NSG)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA)における肉芽腫の鑑別:NSGでは凝固壊死を伴う肉芽腫と著明な血管侵襲がみられる。P.acnes 抗体で肉芽腫内は陽性になる。GPAでは好中球壊死を伴う palisading granuloma が特徴であるが、ときに NSG との鑑別が困難な肉芽腫を見ることがある。4)サルコイド反応:類上皮細胞が主体で、低倍率ではあたかもサ症の像を示す悪性リンパ腫がある。肉芽腫内外に異型リンパ球を見出すことが重要である。MALTomaや末梢性Tリンパ腫などでみられる。2.サルコイドーシスと他疾患の合併例の診断1)膠原病:関節リウマチやシェーグレン症候群の肺において肉芽腫とともにリンパ濾胞過形成、細気管支炎、間質性肺炎がみられる。2)リンパ増殖性疾患:サ症とリンパ増殖性疾患との合併がある。3)間質性肺炎:肺サ症に併存する慢性線維性間質性肺炎については、サ症に由るものか、特発性か常に議論になるところである。肉芽腫に由来する線維化は気管支、血管束など広義間質の線維化を確認することが重要であるが、実際例では判断の難しい場合があり、症例を提示して問題点を明らかにしたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ