水が氷結後にチャ芽に凍霜害が発生しない温度域で葉温を制御する節水型防霜法の実証

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タイトル別名
  • Establishment of a Water-saving-type Sprinkler System to Maintain the Temperature of Tea Leaves above the Critical Temperature after Freezing of Water
  • ミズ ガ ヒョウケツ ゴ ニ チャ ガ ニ トウソウガイ ガ ハッセイ シナイ オンドイキ デ ヨウオン オ セイギョ スル セッスイガタボウシモホウ ノ ジッショウ

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抄録

散水氷結法によるチャの防霜において,葉温は散水開始後に凍害発生の危険性のある-2℃付近まで低下し,その後急速に水の氷点(0℃)まで上昇する事例が多い。これまで,この散水初期の葉温低下は,散水量の不足や散水の不均一性のために起きていると考えられてきた。しかし,著者らは,この葉温低下が過冷却現象である可能性を考慮して本研究を実施し,以下のような結果を得た。 <br>1)新芽を沈めた水は,低温庫内で氷核活性細菌の懸濁液と同様に過冷却現象を示した。 <br>2)水中の一番茶新芽は,低温処理により-3℃程度まで葉温が低下しても,水が過冷却中で氷結前であれば被害を受けず,氷結後に葉温が-1.1℃より低下しなければ,被害の発生はなかった。 <br>3)新芽に凍霜害が発生しない温度域で葉温を維持することを目的に温度対応型の散水制御装置を試作し,野外での防霜効果および節水効果を検討した。本制御機は,センサーの感知温度が-0.3℃以上の温度帯を3分間継続する場合に散水を停止し,-0.4℃以下となった場合に散水を再開するように設定した。 <br>4)本制御による防霜は,2011年春期の連続して降霜が見られた条件下でも,一番茶新芽を凍霜害から守ることができた。また,センサー感知温度が-0.4℃以下とならない場合,散水量は非常に少なく,2011年の春期を通じた本制御の使用水量は鹿児島県曽於畑地域で普及している100秒均等間断散水より23%削減された。 <br>以上,本研究では,水が過冷却の状態であれば,氷点以下の低温になっても新芽に凍害は発生しないことが明らかにされた。また,水が氷結後に凍霜害が発生しない温度域で葉温を制御する新しい節水型防霜法は,実用性が高いことが確認された。

収録刊行物

  • 茶業研究報告

    茶業研究報告 2012 (113), 113_11-113_26, 2012

    日本茶業学会

参考文献 (1)*注記

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