暑熱ストレスが産業動物の生産性に与える影響

  • 阪谷 美樹
    農研機構 九州沖縄農業研究センター 畜産草地研究領域

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of summer heat stress on domestic animals
  • ショネツ ストレス ガ サンギョウ ドウブツ ノ セイサンセイ ニ アタエル エイキョウ

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説明

近年の地球温暖化は家畜の生産性や繁殖性に大きな影響を与えている.特に,夏季の高温による影響は年々深刻さを増しており,気候変動に関する政府間パネルの温暖化シナリオによると,日本では2100年に気温で約3℃の上昇が予測されるほか,真夏日や猛暑日の日数も現在以上に増加し,今後ますます夏季の暑熱ストレスによる影響が問題になると考えられる.暑熱ストレスは気温だけでなく,湿度が大きく関係しており,乳牛などの反芻動物では湿度の影響が大きいと言われている.暑熱ストレスは家畜の体温上昇を引き起こすことで,生産性や生理機能に悪影響を与えると考えられている.体温上昇は乾物摂取量の減少や日増体量の低下などを引き起こすだけでなく,体内の酸化ストレスを亢進させることで代謝などに重要なホルモン分泌を含めた生理機能に悪影響を与える結果,生産性や繁殖能力を低下させる.繁殖分野では受胎率の低下が最も大きな問題の一つである.夏季の受胎率が他の季節より低下するために生じる経済的な損失は重大である.この総説では暑熱が各家畜に与える影響を体温に着目して考察し,生産性と繁殖性に及ぼす具体的な例とともに,暑熱ストレスの対策技術について,現状と将来の展望について最近の知見を交えて紹介する.

収録刊行物

  • Japanese Journal of Large Animal Clinics

    Japanese Journal of Large Animal Clinics 5 (Supple), 238-246, 2015

    日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会・九州沖縄産業動物臨床研究会

被引用文献 (5)*注記

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