近距離の地震観測記録に見られる伝播経路の不均質の影響

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タイトル別名
  • Effect of Random Inhomogeneity in the Propagation Path on Short Distance Seismic Ground Motion Records

抄録

<p>地球内部の媒質の不均質性は散乱効果として観測地震動に影響を与えており, 数値シミュレーションでの散乱効果の評価精度を向上させるためには, 適切な不均質パラメータの設定が必要となる.本研究では内陸地震を想定して工学的に重要となる近距離における地震波の散乱効果の評価を目的とし, それに対して適切な不均質パラメータについての検討を行った.不均質モデルとしてはランダムな速度不均質を仮定して, 不均質の強さ(ε)と相関距離(a)をKiK-netの地中観測記録から推定した.その際に, まず地表・地中間の伝達関数の逆解析により地盤モデルの最適化を行い, 同定地盤モデルに基づいて堆積層の影響を取り除いた地震基盤波を推定した.次に震源距離約10kmから60kmの近距離の記録を対象として, 推定基盤波の包絡形に散乱理論に基づいた包絡形を適合させる最小二乗法によりε2/aの値を推定した.その結果, 震源距離が約20km以下の記録に既往研究の結果と比較して大きなε2/aを示す傾向が確認された.ただし包絡形の理論式は散乱の飽和条件から規定される距離以上で適用可能となるため, 近距離でのε2/aは理論式の適用範囲外での推定値となっている可能性がある.そこで近距離での散乱効果の確認のために3次元ランダム不均質媒質を用いた差分法での数値シミュレーションを実施した.観測波と同様に計算波に対して適合するε2/aの推定を行ったところ, 近距離記録のε2/aは見かけ上解析モデルの設定値より大きな値を示すことが確認され, 観測記録からの結果と類似する距離依存性が見られた.観測記録からの結果と数値解析における3種の不均質モデルによる結果とを比較したところa=4km, ε=0.05のモデルが観測記録の包絡形の全体的な性状を説明できることを確認した.</p>

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参考文献 (18)*注記

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