『スシュルタサンヒター』の構成における臨床的視点

書誌事項

タイトル別名
  • The Clinical Viewpoint in the Structure of the Susrutasamhita

この論文をさがす

説明

インド医学の病理論について,Carakasamhita(以下CS)系統の医学書では「病気の原因」を扱うNidanasthana(以下Ns)を中心とするnidana論が展開されるが,Susrutasamhita(以下SS)にそのような議論は見られない.本稿では医学書としての構成と標題(分類項目)に注目し,SSの病理への関心像を考察した.Cikitsasthana(以下Cs)はNsとの対応項目に増補して成立したと考えられ,SSのNsはCSに比べ増補が多い.病巣の局在を基準により重篤あるいは診断の異なる病態を区別して配置した階層的構成をもつSSは解剖学的な部位と疾患機序に基づいた分類を重視しており,その背景に豊富な臨床例の観察が想定された.Uttaratantra(以下Ut)はAstangaのうち4部門に対応し,CSのCsで増補された項目の一部がSSではUtのkayacikitsa(以下kyc)に収録される.基本的には病理(Ns)と治療法(Cs)は別々に記載されるが,Utは病理と治療法を同一項目内に収録し,循環器系・消化器系など身体機能に応じた配置で構成されている.従ってUtには現代の病理学や解剖生理学にも通じる臨床的視点がある.ところで既出刊本ではUtにおいて6.38(女性生殖器疾患)が小児科を扱うkaumarabhrtya(以下kmbh)最終部に含まれているが,上記の特徴を踏まえると構成上6.38はkmbhではなくkycの泌尿器/生殖器関連箇所に配置されるべきである.そこでthe Nepal-German Manuscript Preservation Project (NGMPP)のSSネパール写本を検証したところ,果たして6.38はkmbhではなくkycの男性生殖器疾患(6.59)に続けて収録されていた.従ってこれがUt本来の配置であったと想定される.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ