中世編纂のアヴァダーナ文献に見られる長老伝について

書誌事項

タイトル別名
  • Buddhist Avadana Literature in Medieval India:
  • Buddhist Avadana Literature in Medieval India : The Legends of the Elders in the Avadanakalpalata and the Asokavadanamala
  • ―― AvadanakalpalataとAsokavadanamalaを中心に――
  • The Legends of the Elders in the Avadanakalpalata and the Asokavadanamala

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説明

Ksemendra (ca. 990-1066)の仏教説話集Avadanakalpalata第72章及び11世紀以降にネパールで編纂された説話集Asokavadanamala第二章はアショーカ王の仏教帰依に大きな役割を果たしたウパグプタ長老の伝記を扱っている.両伝本所収のウパグプタ長老伝は「遊女ヴァーサヴァダッターの物語」と「ウパグプタのマーラ教導物語」から構成される.本論では前者を取り上げ,両伝本が仏教に対しどのような態度をとっているかという問題を考察した.同考察の前段階としてKsemendra本の説話材源がDivyavadana,漢訳『阿育王伝』,『阿育王経』,『賢愚経』『付法蔵因縁伝』所収の並行伝本の何れの祖形に求められるかを検討した.Ksemendra本は『阿育王経』所収話のみと共有する説話要素を保持し,Ksemendraが『阿育王経』の祖形*Asokarajasutraの祖形に近い伝本に基づいて物語を著したことが推定される.AvadanakalpalataとAsokavadanamala所収話については次のような仏教観の違いが確認され得る.(1)Ksemendra本は仏教教義を単なる物語脚色の素材に用いているに過ぎない.(2)他方Asokavadanamalaは大乗仏教を宣伝する意図が顕著であるが,独創性を全く欠いている.以上からKsemendraの著作姿勢は11世紀頃のカシミールにおけるヒンドゥー教徒の仏教観を反映していること,Asokavadanamalaは仏教及び仏教徒の創作活動が衰退し,仏教徒が民衆布教に躍起になっていた時期に著された作品であることが推定される.

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