南スマトラ・Jambi出土金銅四臂菩薩立像について

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  • Study of a Four-armed Gilt Bronze Standing Bodhisattva Unearthed in Jambi, South Sumatra

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Jambi州立博物館に所蔵されている金銅四臂菩薩立像(No. 04.094)は,管見のかぎり先行研究が乏しく,今回その形状を紹介することとした.この像は1991年2月3日に,インドネシア,南スマトラのJambiにて農民により金銅四臂観音菩薩立像(No. 04.093)とともに発見された.博物館では制作推定年代を10〜12世紀においている.卵形の顔面に厚い唇,三道を有して肩幅が広く,腰がくびれ,左足を屈するが,ほぼまっすぐに立つ等からシュリーヴィジャヤの様式を呈していると考えられる.像高は29.0cm,鍍金仕上げで,いたるところが欠損し,緑色のさびが見える.四臂のうち,右手第一(与願印),第二(梵夾),左手第一手(蓮茎を握った跡か),左手第二手は手首から先が欠損している.また,裳の下,両足は欠損している.腰をひねり,全身でゆるい逆S字を描く体形を成し,右手両肘箇所と太腿に大きく亀裂が走る.背面は一面に破損し,腰を起点に上半身,下半身が前方へ屈する.後頭部辺りから何らかの負荷がかかり,背面全体が破損し,その後腐食が進んだものと推察される.高く結い上げた宝髻,やや蕨手状の垂髪,大きな白毫,精緻な顔面の表現に対し,装飾は臂釧と腰バンドほどで華美ではないこと,そして左手第二手が梵夾を握ること等が特徴といえよう.四臂の持物については,中部ジャワの石像,及び鋳造の四臂観音菩薩立像27躯,坐像20躯を検討した結果,右手第一,第二手,左手第一,第二手が,与願印,数珠,蓮華,梵夾が多く,第二手に梵夾を執る作例は見当たらない,しかしバンコク国立博物館の四臂観音菩薩立像が蓮華,数珠,水瓶,梵夾を執ることから,本像も特異な一例とみることができよう.顔の様式の源流は,マレー半島のドバラバティ様式である可能性が考えられる.像高,様式等から,ジャワ島出土の鋳造像,またスマトラ出土の他の鋳造像とは異なる系統にあることが窺われる.

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