13世紀の板蟇股に見る力学的合理性を持った装飾

書誌事項

タイトル別名
  • An Ornament of Itakaerumata in 13<sup>th</sup> Century Had Structural Rationality
  • 13セイキ ノ イタ マ コ ニ ミル リキガクテキ ゴウリセイ オ モッタ ソウショク

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抄録

本研究の目的は13世紀における板蟇股の力学的合理性の解明を通して当時の設計者の力学的感性について考察することである。本研究では日本伝統建築において束の役割を担うために配置され構造材の役割を担う板蟇股の形態に着目した。蟇股の形態は時代や地域,作り手によって異なる設計がなされるため,建築物の建立時代を明らかにする指標の一つである。そして,中世は蟇股が構造材から装飾材の役割へと変容を遂げた変換期である。そこで本研究では,中世初期に当たる13世紀の板蟇股に掘りこまれた眼玉と呼ばれる二つの小さな凹みの意匠に着目した。13世紀に制作された板蟇股の3Dモデルを用いて木材の材料特性である直交異方性を考慮した非線形構造解析を行った。解析結果から,板蟇股に施された二つの小さな穴が応力集中緩和の傾向をもつことが示され,一見装飾的な印象を受けるこの眼玉が構造的な機能性につながる力学的合理性の上に成り立っている意匠であることの可能性が示された。

収録刊行物

  • デザイン学研究

    デザイン学研究 63 (5), 5_7-5_14, 2017

    一般社団法人 日本デザイン学会

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