蝶と訪花植物との関係について : 「北見の蝶(1994)」の訪花記録から見えてくること

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タイトル別名
  • チョウ ト ホウカ ショクブツ ト ノ カンケイ ニ ツイテ キタミ ノ チョウ 1994 ノ ホウカ キロク カラ ミエテ クル コト

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説明

北海道北見市産の蝶の訪花記録について検討した結果、以下のことが明らかになった。多くの蝶を引きつける植物は、小花をまとめて一つの花序となった植物であり、分類学的にはキク科、セリ科、マメ科が多い。これらの花序は蝶の吸蜜滞在時間を延ばす利点を持つ。多くの種類の花から吸蜜する蝶はエゾスジグロシロチョウ、アカマダラ、モンキチョウ、モンシロチョウ、クジャクチョウ、コキマダラセセリ、ベニシジミの順となる。例外はあるにせよ、草地、草原を活動の場としている蝶に多い。在来種、外来種の別なく吸蜜する蝶はチャマダラセセリ、ギンイチモンジセセリ、イチモンジセセリ、カバイロシジミ、アサマシジミ、カラフトタカネキマダラセセリなどで、アサマシジミを除いて牧場、畑地、公園、土手、堤防、河川敷、線路沿い、人家周辺など人工的環境に進出している蝶に多い。森林性、林縁性の種の多くは狭訪花性であり、蜜源を在来植物に依存しているものが多い。種名を列挙するとフタスジチョウ、エルタテハ、スギタニルリシジミ、ヒメキマダラヒカゲなどである。従って、物理的な環境破壊ばかりでなく、それにともなう植生の乾性系列の遷移によっても、日本在来蜜源植物の衰退を招き狭訪花性の蝶、在来植物に蜜源を頼る蝶から衰退していく可能性がある。

収録刊行物

  • やどりが

    やどりが 2006 (211), 39-47, 2006

    日本鱗翅学会

参考文献 (6)*注記

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