暗示的、明示的知識の枠組み内において時間制約の有る文法性判断テストが明らかにすることとは?

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タイトル別名
  • What do Timed Grammaticality Judgment Tests reveal within the framework of implicit and explicit knowledge?

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抄録

<p>当研究はLoewen (2009)を基に文法性判断テスト (GJT)の構成概念妥当性の調査を試みたものである。時間制約のあるGJT(暗示的知識を測ると考えられる)におけるL2学習者のパフォーマンスの正確さと、判断する際の「直感」の使用度(自己報告による)との関係を、タスク刺激(文法的な文と非文法的な文の2種類)と17種類の文法構造に関して主に調査した。日本の二つの大学から90名の日本人英語学習者に時間制約(4秒間の反応時間)のあるGJTと時間制約のないGJTを課した。相関分析から明らかになったことは、17種類の文法構造のうち、唯一「複数のs」のみに対するパフォーマンスの正確さが、自己報告による直感使用との有意な相関を示した。一方、タスク刺激に関しては、文法的、非文法的な文のいずれも直感使用との有意な相関を示さなかった。暗示的知識としての「複数のs」をEllis (2006)で提唱された暗示的知識の難易度決定要素に基づき調査した所、単純な「機能的価値」と容易な「言語処理可能性」を有するため「複数のs」は比較的簡単であると捉えられることがわかった。しかしながら、時間制約のあるGJTの正解率の順番ではその構造は12番目に位置している。自己報告データの分析も取り入れて明らかになったのは、文の内容理解のような暗示的知識の難易度に影響を与える様々な要素が存在するであろうということであった。さらに、直感の使用が主観的な報告に基づくものではあったものの、時間制約のあるGJTが暗示的知識を測ると言えるのかどうか明確にするためには、理想的な反応時間の考慮が重要であることが結果から示唆される。主観的と客観的な分析の双方を実施することで、GJTの妥当性の問題により貢献できると言えよう。</p>

収録刊行物

  • 第二言語

    第二言語 12 (0), 43-60, 2013

    日本第二言語習得学会

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