小児がんに対する強度変調放射線治療適用の現状と課題

  • 溝脇 尚志
    京都大学大学院医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学

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<p>放射線治療は,多くの小児がんにおいて必須の治療手段の一つとして位置付けられている.一方,放射線治療に起因する晩期有害事象は小児がん患者にとって大きな問題であり,併用化学療法の強度を上げて放射線量を低減したり放射線照射範囲を縮小する試みが行われてきた.近年の技術革新の結果,強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy: IMRT)が日常臨床現場に普及するようになり,高線量照射域に含まれる正常組織の体積を大幅に軽減可能となった.一方で,IMRT照射法での実照射時間の延長に起因する低線量全身被曝の増加に伴う二次がん発生リスクの増加が懸念材料となり,小児がんへの普及は極めて緩やかであった.しかしながら,IMRTの回転照射版であるvolumetric-modulated arc therapy(VMAT)の実用化によって,実照射時間が大幅に短縮された結果,小児への積極的な適用が広がっている.IMRTは,特に中枢神経系腫瘍に対する有用性が高く,粒子線治療を上回る線量分布を実現可能な場合もある.京都大学においては,全脳照射にIMRTを用いて頭皮線量の低減を図り,永久脱毛を防止することによって患児の生活の質を向上させることに成功している.このような治療は粒子線では実施不可能であり,IMRTの特徴を生かした臨床適用の今後の広がりが期待される.</p>

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