脳血管障害片麻痺患者の大胸筋短縮が,腹筋群 およびハムストリングスの筋緊張に及ぼす影響

Bibliographic Information

Other Title
  • ―表面筋電図による治療効果判定を行った一症例について―

Description

今回我々は脳血管障害片麻痺患者の治療を経験した。その症例の主要な問題点としては歩行障害があり,歩容としては麻痺側遊脚相に体幹が麻痺側前方に傾斜し,麻痺側の足尖離地が不十分であった。初期評価時,体幹の麻痺側前方への傾斜には麻痺側腹筋群の筋緊張低下が関与していると考えた。また下肢においては不安定性に対して代償的に生じた非麻痺側ハムストリングスの過緊張もみられた。本症例に対し、腹筋群の筋緊張低下に対しての治療を行ったが治療効果はプラトーに達した。そこで我々は再評価を行い新たに麻痺側大胸筋の短縮に着目した。この麻痺側大胸筋の短縮は,長期間に渡り腹筋群の筋緊張低下により生じる不安定性を代償していたために生じたものであり,この大胸筋の短縮が肩甲帯および体幹の可動性を低下させ,さらに腹筋群の筋緊張を低下させるという悪循環を生じていると考えた。そこで治療としては新たに麻痺側大胸筋の短縮に対するストレッチングを行い,その治療効果の判定を表面筋電図を用いて行った。その結果,一回の麻痺側大胸筋のストレッチングにより低下していた腹筋群の筋緊張は治療前に比べ増大し,過緊張を起こしていた非麻痺側ハムストリングスでは筋緊張の低下がみられた。また,腹筋群の治療と麻痺側大胸筋の短縮に対するストレッチングを併用することで歩行の不安定性も減少した。本症例を経験する中で,脳血管障害により一次的に生じる腹筋群の筋緊張低下に対する治療を行うのみでなく,長期の経過により生じる二次的な麻痺側大胸筋の筋短縮への治療も重要であることが考えられた。<br>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680415857792
  • NII Article ID
    130004597550
  • DOI
    10.11542/icpt.1.118
  • ISSN
    13478745
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top