数種マングローブ胎生種子のイオン組成

  • 加藤 茂
    NODAI Research Institute, Tokyo University of Agriculture
  • 矢口 行雄
    NODAI Research Institute, Tokyo University of Agriculture
  • 杉 二郎
    NODAI Research Institute, Tokyo University of Agriculture

書誌事項

タイトル別名
  • Ion Components in Some Mangrove Viviparous Seeds
  • スウシュ マングローブ タイセイ シュシ ノ イオン ソセイ

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抄録

塩生植物であるマングローブは, 熱帯・亜熱帯の内湾あるいは河口付近の海岸から河川沿岸汽水域にわたり分布し独特な生理機能を有する植生植物の総称である.これらマングローブ植物のうちでRhizophoraceaeは, 胎生種子を形成し次世代の形成を行っている.胎生種子5種類と最も海水の影響を受けながら生育を続けるヒルギダマシ種子およびガク筒内の無機イオン (陽イオンおよび陰イオン) および有機酸の分析を行い, それらの実態を把握しその塩性生理のメカニズムを解明するための第一段実験を試みた.<BR>供試マングローブ種子中のおもな無機イオンは, ナトリウム, カリウムおよび塩素であった.胎生種子上部にはナトリウムおよび塩素の濃度が高い値を示し, カリウム濃度は種子下部で高く, その結果種子下部のNa/K比は上部に比較して小さい値を示した, 胎生種子中のおもな有機酸は, シュウ酸とリンゴ酸であった.胎生種子ガク筒中のおもな無機イオンは, ナトリウム, カリウムおよび塩素であり, とくに種皮および子葉体部には担根体部の2~3倍の濃度で蓄積されていた. 根細胞を通過した各種無機イオンは, 導管を通じて植物体内を移行し種子に到達し生育のために利用されるのであるが, 過剰に植物体内に吸収され正常な生育を阻害する各種無機イオンは種子ガク筒部の組織で通過を抑制され(ガク筒部内に蓄積), 担根体部への移行が調節されていることが示唆される. 海水汽水の環境下で海水成分を吸収した根系部および地上部での汁液 (細胞液) の成分がどのように変化していくかは塩生植物にとって最も興味のあるところである, したがって次に外液ならびに体内液の塩の挙動がイオン化した場合と塩そのままの場合を分別して測定し相互関係を比較することによって植物体の活性を推測できることを想定して実験を行う.

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