口蓋裂を伴った上顎体の一例

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タイトル別名
  • Epignathus Combined with Cleft Palate
  • Report of a Case

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抄録

上顎体は奇形腫あるいは,二重体奇形のあるタイプに属し,その発症部位が口蓋あるいは,頭蓋底部に置かれているものは特に稀である.今回われわれの経験した上顎体の一例は,4カ月の女児で,その母親が患児の口蓋裂と,上咽頭に基部を持つ腫瘍先端の口裂からの露呈を主訴として受診した.入院精査の上,主訴の腫瘍は上顎体と診断された.これに基づき,全身麻酔のもと1975年3月●に,上顎体の外科的摘除が行われた.切開線は,奇形腫瘤の皮膚部分よりやや外周の上咽頭天蓋,鼻中隔底部の粘膜部分に入れられ,上顎体基底部の下方で切除した.骨様の硬組織は介在しなかったが,歯胚一個が見いだされ,全体としては比較的容易に切離され,出血も少なかった.<BR>摘出物の大きさは,2×2×4cmの円筒形,その基部は径4cmと広基性で,左鼻中隔底部と上咽頭に位置していた.上顎体先端部には,産毛様の白色毛髪があり,全体としては,皮膚様組織で被覆されていた.摘出した奇形性腫瘤の工業用ノンスクリーンフィルムを用いたSoftex・X線撮影像において,特に骨様の物は見いださなかったが,その基底部前方に,歯胚様硬組織塊が計3個見られた.組織学的検索でば,皮膚様組織脂肪組織が主体で,歯胚を含む奇形腫性奇形teratoid malformationと診断された.術後経過は良好で退院遠隔地の自宅療養に移され,次に口蓋裂にたいする形成術を待機することとなった.しかし術後8か月あまりの1975年11月,自宅にて肺炎のため不幸な転機を取った.<BR>清水の1962年から1981年にいたる東京医科歯科大学口腔外科における自験例資料に基づく口腔顔面領域裂奇形3,119例に対する口蓋裂を伴った上顎体の発生頻度としては0.032%,同口蓋裂単独1,176例に対しては0.085%,唇顎口蓋裂も含めた全口蓋裂保有症例2,262例に対しては0.044%の値が得られた.

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