格魯布性肺炎ノ無熱ニ經過シタル一例

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我例ハ左肺ノ上葉及右肺ノ上中兩葉ニ於テ纎維素性(格魯布性)肺炎ニ固有ナル病的變化有ルノミカ最新ノ病竈即チ右肺中葉ニ在テハフレンケル氏肺炎複球菌ノ殆ント純培養ノ状ヲ成シテ存在スルニ拘ラズ殆ント無熱ニ經過シタルモノナリ、但シ末期ニ於テ最高三十八度三分ノ熱發ヲ見タルコト有リト雖這ハ恐ラク腦障害ニ伴フ部分現象ナラン歟、然レトモ若シ之ヲ肺炎ニ伴フモノナリトセバ其程度及其定型共ニ極メテ破格ノ一例ナリトセザル可カラズ。<br>若シ夫レ腦投栓子ノ由來ニ至テハ茲ニ深ク論究スルコトヲ避クヘシ是レ此報告ノ主旨ニアラザレハナリ然レドモ肺炎性病竈ヨリ肺靜脈ニ向テ投栓子ノ材料ヲ供給スルコトハ敢テ稀有ナラザル事例ナリトス。<br>終リニ臨ミテ余ハ恩師桂田博士ノ終始懇厚ナル誘導ノ勞ヲ取リ給ヒシコトト、久保助教授ノ親切ニ有益ナル注意ヲ給ハリシコトト、大前助手ノ多大ナル補助ヲ給ハリシコトトヲ深ク感謝セザル可カラザルナリ。

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