モクズガニEriocheir japonicus DE HAANの海域における出現状況と行動

  • 小林 哲
    Department of Fisheries, Faculty of Agriculture, Kyushu University
  • 松浦 修平
    Department of Fisheries, Faculty of Agriculture, Kyushu University

書誌事項

タイトル別名
  • Occurrence Pattern and Behavior of the Japanese MittenCrab Eriocheir japonicus DE HAAN in the Marine Environment

抄録

モクズガニ.Eriocheir japonicusの海域での生息環境と出現時期,及び行動を記載した.福岡県宗像郡津屋崎町海岸の潮間帯から浅海域において,1990年から1991年にかけての1年間,ほぼ2-3日に1度の割合で,日中の干潮時に1時間,手網による採集を行った.モクズガニは9月初旬から7月初旬(初秋から初夏)にかけて,岩礁域,転石の混じる砂浜,砂浜のいずれにおいても採集され,底質にとらわれずに移動していることが明らかになった.各生息場所では他のカニ類も同様に採集されたが,モクズガニは潮間帯では比較的大型のカニであり,モクズガニが海域へ侵入することによる群集への影響も考えられた.そこで各生息場所における出現時期を他のカニ類と比較すると,年中出現するイソガニなどの小型種とは重なっていたが,イシガニなどの大型種との重なりは小さく,他の大型種の出現が初夏から晩秋にかけてであるのと逆転していた.このようにモクズガニは,主に生息場所利用において最も類似していると思われる大型カニ類がまれな時期に,海域で過ごすことが明らかになった.また,モクズガニは特定の巣穴を造らずに潜砂するか岩の下に身を隠していた.移動(放浪)および摂餌は水中で行われ,干出時には隠れてほとんど活動が見られなかった.多くの雌が岩の下に隠れた状態で採集されたのに対し,雄では放浪個体が多く採集され,雄が雌に比べ活動性の高いことが推察された.また体表の付着生物(主に緑藻類)が雌よりも雄により多く見出された.このことは付着藻類の成長に必要な太陽光下で過ごす時間の違いを示しており,雄の活動性の高さを反映していると考えられた.

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被引用文献 (6)*注記

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