症例 Double ventricularresponse発生時に房室結節リエントリー性頻拍が誘発された1例

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タイトル別名
  • A case of atrioventricular nodal reentrant tachycardia following double ventricular response through dual atrioventricular nodal pathways

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説明

房室間に複数の伝導路の存在する場合,1つの心房興奮に対し,2つの心室興奮が生じるdouble ventricular response(心室二重応答:DVR)の認められることが知られている.我々は二重房室結節伝導路(DAVNP)を介するDVRから房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)が誘発された症例を経験したので報告する.症例は42歳男性.毎分140の発作性頻拍で入院した.入院時一般検査に異常を認めなかった.電気生理学的検査では心房早期および頻回刺激によりDVRが認められ,ついで正常洞調律時と同様のQRS波形の頻拍が誘発された.DVRによる2つのV波は洞調律時と等しいHV時間を示すH波を先行しておりDAVNPを介するDVRと考えられた.DAVNPの存在に加え,頻拍中の最早期心房興奮部位が下位右房中隔側であり,この頻拍をAVNRTと診断した.また洞調律時に加えた心室早期刺激により,逆伝導心房興奮を伴わずにAVNRTが誘発され,このAVNRTの出現様式は極めてまれであると考えられた.また,ベラバミル静注後,洞調律からDVRが認められた.DVRはまれな現象とされているが,その成立条件として,slow pathwayとfast pathwayを介する伝導時間の差が房室結節下位共通路以下の不応期より長いこと,およびfast pathwayからslow pathwayへの逆伝導がない事が必要と考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 20 (4), 457-462, 1988

    Japan Heart Foundation

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