症例 クリーゼの際,左心室基部に限局する壁運動低下を呈した褐色細胞腫の1例

書誌事項

タイトル別名
  • Akinesis of left ventricular basal segments caused by pheochromocytoma crisis

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説明

褐色細胞腫患者においてクリーゼの際,左心不全を発症し,断層心エコー図および左室造影で特異な壁運動異常を認めた.患者は48歳,男性.約7時間前より続く前胸部絞掘感,頭痛,一過性高血圧を主訴に来院した.来院時の収縮期血圧は158mmHgとわずかな上昇にとどまっていたが,胸部X線では,肺うっ血を認め,心電図上のST変化,心筋逸脱酵素の上昇より,急性心筋梗塞を疑い,緊急心カテーテル検査を施行した.冠動脈は正常であったが,肺動脈模入圧,左室拡張末期圧の上昇を認め,左室造影では,駆出率は28%と低下していた.しかも造影像は心基部では全周性にakinesisであるが,心尖部の壁運動は保たれるという特異なもので,断層心エコー図においても同様の所見が得られた.翌日,血中,尿中のカテコールアミン濃度および腹部超音波像より,左副腎腫瘍(褐色細胞腫)と診断された.褐色細胞腫摘出術後,断層心エコーにより,左室壁運動は正常化したことが確認された.カテコールアミン過剰により拡張型心筋症様の左心腔拡大,壁運動低下を認め,うっ血性心不全を呈することは知られているが,具体的に壁運動異常を記載した報告はまれであるので報告した.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 23 (4), 428-433, 1991

    Japan Heart Foundation

被引用文献 (1)*注記

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