症例 ヘモフィルスパラインフルエンザによる感染性心内膜炎の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of Haemophilus parainfluenzae endocarditis

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説明

起炎菌としては極めてまれなヘモフィルスパラインフルエンザ(HP)による感染性心内膜炎(IE)を経験したので報告する.症例は23歳の男性,生来健康で心雑音を指摘されたことはなかった.昭和58年12月中頃より発熱し翌年1月心雑音の出現を指摘され入院.静脈血培養にて4回HPが検出された.断層心エコー図では僧帽弁前尖に径6mmの疣贅が見られ,カラードプラ法でII度の僧帽弁逆流が認められた.弁自体の破壊は明らかではなく,疣贅が収縮期に左室から左房へ反転する動きを示し,僧帽弁逆流は腱索断裂によるものと考えられた.炎症所見は抗生物質の投与により消失し,心不全も見られなかったが,疣贅の性状から塞栓症を起こす可能性が高いと判断し疣贅切除および弁輪縫縮術を行った.<BR>HPは上気道の常在菌であるが,基礎疾患のない若年成人にもIEを起こし大きな疣贅を作り塞栓を多発するとされている.IEの全起炎菌に占める割合はヘモフィルス属全体でも0.4%とまれなものであり,HPによるIEの本邦の報告例は我々の検索では2例のみであった.しかしながらHPは各種抗生剤に感受性を持つため菌が分離されにくいことが指摘されており,診断のなされていない例もあるものと思われる.本疾患では緩徐に疣贅を形成し塞栓症を起こしてくるため,原因不明の発熱の持続する症例では確定診断に努めるとともに,繰り返しての心エコー検査が必要と思われた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 21 (8), 994-998, 1989-08-15

    Japan Heart Foundation

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680465525632
  • NII論文ID
    130004412256
  • DOI
    10.11281/shinzo1969.21.8_994
  • ISSN
    05864488
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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