書誌事項
- タイトル別名
-
- NEUROTOXICITY OF CARBAPENEM COMPOUNDS AND OTHER BETA-LACTAM ANTIBIOTICS
- カルバペネム系化合物を中心に
この論文をさがす
説明
1928年のA. FLEMINGによるペニシリンの発見がその1頁を開いた, いわゆるβ-ラクタム系抗生剤の歴史は長く, ペニシリンが初あて医薬品として開発されて以来, 50年が経過した。その間, ペニシリン, セファロスポリンに代表される多くのβ-ラクタム系抗生剤が, 医療に多大に貢献してきていることは良く知られるところである。<BR>β-ラクタム系抗生剤が, 優れた抗菌活性を示すのみならず, そのメカニズムが細菌特有の細胞壁の合成阻害であることから細菌に対する選択毒性が極あて高く, 臨床において副作用の発現が少ないこと即ち, 安全性が高いことが, β-ラクタム系抗生剤が臨床の場で使い安い抗菌剤としての不動の地位を維持してきたと言える。<BR>事実, β-ラクタム系抗生剤の臨床の場における副作用は, アナフィラキシーショックを除けば抗菌メカニズムが異なる他の抗菌薬と比較し, その安全域の広さと障害の重篤さのいずれにおいても明らかに勝っている。しかしながら, その様に安全性が高いと考えられるβ-ラクタム系抗生剤も, 臨床においてショック以外の副作用が全く発現しないのではなく, 古くからアレルギー症状1, 2),腎毒性3), 消化器系副作用4), あるいは中枢性副作用5) などの副作用が報告されている。消化器系副作用については軽微なものが殆どであり, ショックやアレルギー, 腎毒性については各々, 皮内反応による事前チェック1)あるいは血液生化学的モニタリングなどによる対応がとられている。一方, 中枢性副作用の発現については, 中枢神経系障害, 腎不全など幾つかのリスクファクターが明らかになっているものの6), 的確なモニタリングが困難であり, まれにではあるが重篤な症状を呈するケースが報告されており7), 臨床上重要な副作用と考えなければならない。<BR>β-ラクタム系抗生剤に付随する中枢性副作用に関しては, 中枢性副作用が報告されているペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤を用いたIn vitro8)及びIn vivo実験9~11) あるいは, それらの脳内移行性 (脳血液関門の透過性等) 12) についての研究が既に報告されているが, 薬剤の構造との関連即ち, 中枢性副作用についての詳細な構造活性相関研究はほとんど行われておらず, 僅かにセフェム系抗生剤について痙攣誘発性の高い抗生剤にはテトラゾール基, チアジァゾール基, ピリジン基などが側鎖に含まれていると報告されているにとどまっている13, 14)。カルバペネム系抗生剤については開発された薬剤も少なく, その中枢性副作用と構造についての詳細な報告は皆無である。<BR>我々は, β-ラクタム系抗生剤の中枢性副作用を克服するたあには脳血液関門の透過性を抑制するアプローチよりも, 化合物自身が中枢への作用を示さない薬物設計が, より本質的なアプローチであると考えるとともに, ペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤と構造的に異なったカルバペネム系抗生剤であるImipenem (IPM) がペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤と同様, 痙攣誘発という中枢性副作用を有する15, 16) ことに注目し, カルバペネム系化合物と中枢作用に関する構造活性相関を検討し, 同時に従来から知られているペニシリン系, セファロスポリン系抗生剤の中枢作用についてカルバペネム系化合物との比較という観点で考察を加え, 興味深い結果を得たので本稿で報告する。
収録刊行物
-
- The Japanese Journal of Antibiotics
-
The Japanese Journal of Antibiotics 49 (1), 1-16, 1996
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680472712576
-
- NII論文ID
- 10020607618
-
- NII書誌ID
- AN00002626
-
- COI
- 1:CAS:528:DyaK28XpslChtw%3D%3D
-
- ISSN
- 21865477
- 03682781
-
- PubMed
- 8851303
-
- 本文言語コード
- ja
-
- 資料種別
- journal article
-
- データソース種別
-
- JaLC
- PubMed
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可