イヌの先天性第VII因子低下症例

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タイトル別名
  • Congenital Deficiency of Factor VII in a Canine Family

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説明

イヌ (Beagle) の血液凝固系検査を実施したところ, 活性化部分トロンボプラスチン時間には変化がなく, プロトロンビン時間に延長の認められる個体が数例出現した。この症状は外因系の凝固因子に異常のある可能性が高いため, 交叉補正試験および外因系各凝固因子の定量, ならびに血液中の抗第VII因子の存在等について検討した。その結果, 1) 交叉補正試験において, プロトロンビン時間延長個体の血漿に正常イヌの硫酸バリウム吸着血漿を添加してもプロトロンビン時間の値に変化は認められなかったが, 正常イヌプール血清の添加によってその値が補正された。2) 第VII因子活性はヒト標準血漿の活性値を100%とした時, 正常イヌ個体では430~1000%であったが, プロトロンビン時間延長個体では, 約50%となり1/10~1/20程度の低下がみられた。また, 第VII因子複合体の活性も1/3~1/4程度低かった。なお, 第II, VおよびX因子活性の量的関係では, 両者の間に差が認められなかった。3) プロトロンビン時間延長個体と正常個体との間に抗第VII因子および線溶系活性の差異は認められなかった。以上のことから, 今回の実験でみられたプロトロンビン時間の延長は第田因子の単独低下が原因であり, また, この欠乏症例にはいずれも血縁関係が認められたことなどから, イヌの先天性の第VII因子欠乏症であることが確認された。

収録刊行物

  • Experimental Animals

    Experimental Animals 36 (4), 423-430, 1987

    公益社団法人 日本実験動物学会

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