‘草’と‘緑’にかかわる不都合な事実:喪失する公益的環境機能

  • 伊藤 幹二
    特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所 マイクロフォレストリサーチ株式会社

書誌事項

タイトル別名
  • '草'と'緑'にかかわる不都合な真実 : 喪失する公益的環境機能
  • 'クサ'ト'ミドリ'ニ カカワル フツゴウ ナ シンジツ : ソウシツ スル コウエキテキ カンキョウ キノウ

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抄録

地域生活にとって重要な再生資源の自然ストックを使い果たした地域社会は,経済的に崩壊する可能性に直面する.本編では,生活圏における生態系サービス(公益的環境機能)の毀損が引き起こす6種類の環境経済的被害について解説する.(1)表面流水被害:表土と植生がもつ降雨の流出水調節機能が失われた結果生じている社会経済的損害を云い,不透水面の密度や面積が増えたことが原因である.(2)掃流水汚染被害:降雨によって不透水面状からの表層剥離や溶脱有機化学物質や重金属,舗装面上の有機質塵・動物糞尿,農園芸・畜産施設からの掃流表土などによる排水溝・地下水・湖沼・河川の汚染水や汚染土砂堆積.(3)熱汚染被害:建物や舗装面が高密度なることと生活活動からの人工廃熱などによって気温が高く保たれることを云う.表土と植生の熱代謝機能の衰退が原因である.(4)生物汚染被害:不適切な植生管理によって引き起こされる損害である.経済的被害は大きい順に,①雑草害,②虫害,③微生物害,④獣害,⑤鳥害がある.(5)エアロゾル汚染被害:被覆植物や樹木からなる表土の自然浄化機能・濾過機能の減少によって,PM2.5,火山灰・二酸化硫黄,重金属粒子・ディーゼル黒煙粒子・煤煙粒子,そして,ガス状汚染物質(石化燃料排出物など)から生成される硫酸塩,硝酸塩など二次粒子による健康被害.(6)地下水汚染被害:表土および植生の衰退によって,地下水に流入する汚染物質の吸着・吸収・分解・同化・代謝など浄化機能が失われたことが原因で起こる水質汚濁損害.以上の被害は,生態系サービス機能の改善と向上によってのみ軽減させることが出来る.

収録刊行物

  • 草と緑

    草と緑 6 (0), 2-11, 2014

    特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所

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