東日本大震災後の宮城県における避難所感染症サーベイランス

  • 金 美賢
    東北大学大学院医学系研究科微生物学分野
  • 神垣 太郎
    東北大学大学院医学系研究科微生物学分野
  • 三村 敬司
    東北大学大学院医学系研究科微生物学分野
  • 押谷 仁
    東北大学大学院医学系研究科微生物学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Infectious disease surveillance in Miyagi after the Great East Japan Earthquake
  • ヒガシニホン ダイシンサイ ゴ ノ ミヤギケン ニ オケル ヒナンジョ カンセンショウ サーベイランス

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抄録

目的 2011年 3 月11日に発生した東日本大震災によって宮城県では多くの医療機関が被害を受け,また多くの住民が避難所での生活を余儀なくされた。被災地での感染症の流行が懸念されたために避難所における感染症サーベイランス(以下,避難所サーベイランスという)が実施された。本研究ではその避難所サーベイランスによる震災後の感染症の動向についてまとめた。<br/>方法 2011年 3 月18日から11月 6 日まで宮城県では避難所を対象とした避難所サーベイランスが実施された。運用期間中に報告頻度および報告疾患に変更が加えられ,3 月18日から 5 月13日までの実施されたサーベイランス 1 と 5 月10日から11月 6 日までのサーベイランス 2 の大きく 2 つに分けることができる。それぞれについて集計を行い,報告症例および避難所数に占める参加避難所数の割合について記述を行った。<br/>結果 3 月18日からのサーベイランス 1 では8,737例の患者が報告され,84%呼吸器症状であり,16%が消化器症状であった。避難所の平均カバー率は運用開始から 1 週間では4.4%であった。5 月10日からのサーベイランス 2 では1,339例が報告され,やはり呼吸器症状(82%)および消化器症状(13%)が多くみられた。またすべての疾患において 5 歳以下の割合が最も少なかった。いずれの観察期間を通しても明らかなアウトブレイクは認められなかった。<br/>結論 東日本大震災後の避難所サーベイランスにより発災後 1 週間から避難所がすべて閉鎖されるまでの期間について感染症の動向を監視することができた。しかし初期に低い参加率であったこと,報告される疾患は呼吸器および消化器がほとんどであり,それ以外の症候群の報告数が著しく低かったことから早期の監視システムおよび対象疾患の選定に課題を残した。避難所サーベイランスでは定期的に巡回していた医療救護との連携や避難者数の特性を把握する事が有用であると考えられ,震災初期から効率的に情報収集できるシステムを構築する必要があると考えられた。

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