大阪府八尾市における脳卒中の入院患者率と病型割合の推移

書誌事項

タイトル別名
  • Trends in rates of stroke inpatients and proportions of stroke subtypes in Yao City, Osaka
  • オオサカフ ヤオシ ニ オケル ノウソッチュウ ノ ニュウイン カンジャリツ ト ビョウケイ ワリアイ ノ スイイ

この論文をさがす

抄録

目的 わが国の都市部において発生する脳卒中の病型割合の実態,およびその動向については明らかでない。そこで,大阪の一都市において,1990年代~2000年代の脳卒中入院患者を Hospital-based に調査し,脳卒中の入院患者率ならびに病型割合の推移について検討した。<br/>方法 対象地域は大阪府八尾市(2000年人口274,777人)である。1992年(I期),97年(II期),2002年(III期)の各 1 年間に,市内の90床以上の10病院に,脳卒中発症により入院した40歳以上の市民を全数登録した。脳卒中の病型は,症状,既往,塞栓源の有無,CT・MRI 所見等を基に,脳出血,脳梗塞,くも膜下出血に分類し,さらに,脳梗塞については,穿通枝系梗塞,皮質枝系梗塞(血栓型,塞栓型,分類困難)に分類した。<br/>成績 脳卒中入院者数(初発例)は,I期190人,II期206人,III期254人であった。人口に対する脳卒中入院患者率は,I期からIII期にかけて,男の40~59歳で有意に増加し,女の70歳以上で有意に減少した(いずれも P<0.001)。脳卒中全体に占める各病型の割合は,男女いずれの年齢層でも,I期からIII期にかけて有意の変化を認めなかった;男では,ほぼ全ての年齢層において,脳梗塞の割合が最も大きかったが,40~59歳では,脳出血とくも膜下出血を合わせた出血性脳卒中が脳梗塞とほぼ等しい割合を占めた。女では,40~59歳では,出血性脳卒中が脳梗塞の 2 倍以上の割合を占め,60歳代,70歳代では,出血性脳卒中と脳梗塞はほぼ等しい割合であった。脳梗塞の病型は,男女いずれの年齢層でも,穿通枝系梗塞の割合が脳梗塞全体の過半数を占めた。<br/>結論 八尾市における脳卒中入院患者の病型別割合は,1990年代から2000年代前半にかけて有意な変化は認められず,脳出血,穿通枝系梗塞,くも膜下出血という,高血圧性細動脈病変を基盤として発症するタイプの脳卒中が比較的多くを占めることが明らかとなった。したがって,脳卒中予防の観点からは,高血圧対策が依然として重要であると考えられた。また,壮年男性における脳卒中発症の増加の可能性が示されたことから,今後,背景要因の検討が必要である。

収録刊行物

参考文献 (15)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ