保健・医療分野における研究の評価基準 定量的基準と定性的基準の再構築

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タイトル別名
  • RECONSIDERING EVALUATION CRITERIA REGARDING HEALTH CARE RESEARCH: TOWARD AN INTEGRATIVE FRAMEWORK OF QUANTITATIVE AND QUALITATIVE CRITERIA
  • ホケン イリョウ ブンヤ ニ オケル ケンキュウ ノ ヒョウカ キジュン テイリョウテキ キジュン ト テイセイテキ キジュン ノ サイコウチク

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説明

 保健・医療分野における定量的研究と定性的研究のパラダイム間のつながりについての議論は多くの場合混乱したものであり,散乱する用語と議論によって,概念が不明瞭かつ認識困難となってしまっている。このような状況で,厳密さを確立するための評価基準を再構築することは重要である。本研究では,定量的研究・定性的研究における評価基準の背景にある認識論を考察し,多重選択のパラダイムにより,状況や目的の設定によって,どのような評価基準を選択する必要があるのかを議論した。定量的研究・定性的研究の比較議論の中で最も重要な概念は Lincoln らが指摘した妥当性/信用性,信頼性/一貫性,客観性/確証性,一般化可能性/転用可能性の対比である。これらの対比点はそれぞれ,観察の枠組みの設定,観察における安定性の仮定,観察者と被観察事象の影響,知見の適用範囲についての認識の違いであると考えられる。ただし現状でも,全ての定性的研究の手法が後者のパラダイムを選択している訳ではなく,一部の安定性など前者の仮定が部分的に成り立つ範囲において,そのパラダイムによる評価を行うことは有用であると考えられる。定量的研究においても,全ての研究で解釈の余地がない枠組みや普遍的な一般化,観察の全プロセスへの安定性,などの前提が仮定できる訳ではない。適用範囲外への知見の外挿や,安定性が確保できない範囲について,後者のパラダイムを用いた評価を行うことは厳密さを高める上で有用である。定量的・定性的の研究手法に関わらず研究者は各々の状況について,1. 観察の枠組み,2. 観察における安定性,3. 観察者と被観察事象の影響,4. 知見の適用範囲,の各項目に関してどの様な前提を設定することができるか認識し,設定に応じたバランスによって厳密さの評価を行う必要があると考えられる。

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