Oligodendrogliomaと1p/19q欠失─ グリオーマの分子診断の幕開け ─

書誌事項

タイトル別名
  • Oligodendrogliomaと1p/19q欠失--グリオーマの分子診断の幕開け
  • Oligodendroglioma ト 1p 19q ケッシツ グリオーマ ノ ブンシ シンダン ノ マクアケ

この論文をさがす

抄録

私がCairncross, Louis らと1998 年にJournal of National Cancer Institute に発表した論文 "Specific genetic predictors of chemotherapeutic response and survival in patients with anaplastic oligodendrogliomas." は、染色体1番短腕(1p)と19 番長腕(19q)の欠損を有するanaplastic oligodendroglioma がそうでないanaplastic oligodendroglioma に比べて化学療法感受性が高く、予後も良好であることを示したものでした1)。組織診断においては同一の診断となる腫瘍が、生物学的には明確に異なる挙動を示し、それが遺伝子解析の情報によって判断できるという発見は、脳腫瘍の分野においては初めてでした。これを機に、グリオーマにおける1p/19q 欠失の臨床的、生物学的な意義ついての検討が急速に進められ、それまで基礎研究の領域に過ぎなかった分子遺伝学が、一気に臨床の領域と融合するようになった感があります。最近では、glioblastoma におけるMGMT のメチル化とtemozolomide 感受性の相関が示されたり、遺伝子発現プロフィーリングによるglioblastoma の分類が示されたりと、グリオーマの分類、診断、理解において遺伝子情報はほとんど必須になってきました。グリオーマの分子診断の時代が現実になりつつあるわけですが、私たちの仕事はその幕開けを告げるものであったかもしれません。 このたび、光栄にも近畿脳腫瘍病理研究会第100 回記念大会において、この研究に関わった経緯についてお話しさせていただく機会をいただきました。私自身の脳腫瘍との関わりなどを交えながらお話しさせていただいて、少しでも皆様に資するところがあれば幸いです。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ